彼のスーツを脱がす時 2 【NINO】 (ページ7)

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37.王子様の条件←1/24 ページ7

櫻井「すみません、お待たせしました」

「さっ、櫻井さん！？」

櫻井「えっ…Aさん」

櫻井さんもどうやら私がお見合い相手だとは知らなかったようで私に気づくとまあるい瞳をさらにまあるく見開いた

遠藤「あら、お二人お知り合いなの？」

どうしよう

櫻井「ええ…実は仕事で」

まさかお相手が櫻井さんだなんて

遠藤「何だか運命ね、二人がお知り合いなら私はもうここで」

「えっ、遠藤様」

いきなり二人にされても

遠藤「お食事の場所は櫻井くんに伝えてあるから心配ないわよ」

だけどそんな私の気持ちを遠藤様がわかるわけもなく

「いえ、あの」

困り顔の櫻井さんを横目に露骨に騒ぐことも出来ずに

遠藤「それじゃ、また」

嬉しそうに帰る遠藤様の背中を黙って見送るしか出来なかった

櫻井「え…………っと…」

櫻井さんの声に我にかえると

見た彼は困ったように眉を下げる

それはそうだよね

「すみません、お休みまでさせてしまったのに、私はここで大丈夫なので」

せっかく仕事を早く終わらせきたのに

来たのが私って

櫻井さんみたいな人ならきっと好条件の女性が引く手あまたなはず

櫻井「いや、違くてさ」

ポリポリと人差し指で頭をかくと

「え？」

悪戯な瞳が上目使いに私を見る

櫻井「僕とお見合いじゃAさんは嫌ですか？」

櫻井さんの誘いを断れる女がこの世にいるだろうか

「えっ、いや、そんな…寧ろ私なんかが相手なんて」

たじろぐ私に

ニッコリ笑う彼

櫻井「なら、決まり」

「櫻井さん？」

櫻井「何かのご縁って遠藤さんも言ってたじゃないですか、だから、ね？」

最近、ご縁なんて言葉が無縁な人とご縁が有りすぎて

頭がパンクしそうだ

それでも

私に恥をかかせないためにこんな風に誘ってくれる

櫻井さんの優しさを無下にするわけにはいかない

「…はい」

私の返事にまた爽やかな笑顔

櫻井「お腹減りません？」(笑)

「はい」

櫻井「予約時間には少し早いですけど行きましょうか」

「はい」

櫻井さんの後を着いていくように半歩後ろを歩く

やっぱり気になるのは彼の着ているスーツ

どこの職人さんのものだろ

洗練されたデザイン

細身なタイプ

櫻井「気になります？」(笑)

エレベーターに乗ると

「え？」

スーツの裾を持ち上げ

櫻井「仕事の目をしてたから」(笑)

「すみません、こんな時に…」

王子様のように笑う彼は

櫻井「いえ、そんな所が好きです」

私の心臓を止めた