彼のスーツを脱がす時 2 【NINO】 (ページ24)

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54.スイートルーム←3/8 ページ24

二宮「どうかした？」(笑)

急にかけられた声に破られた沈黙

「え？」

二宮「ずっと黙りだから」(笑)

ハンドルを左手に握りながら右肘を窓にかけ慣れた素振りに運転する二宮さんに

見とれてましたなんて言えるわけない

「いえ……えっ…と…運転なさるんだなって」

いつもは櫻井さんが運転する車に乗っているイメージしかない二宮さん

二宮「一応ね？…意外？」

綺麗に口角を持ち上げ悪戯に笑う彼に心臓がまた一段階スピードをあげるから慌てて視線をそらすも

車内は勿論二宮さんの香りに満たされていて

今更ながらこの小さな空間に二人っきりな事に逃げ場がない心臓は口から飛び出そうだ

「はい」

二宮「いつもはうちの櫻井さんが運転してるからね、この車もすっかり櫻井さんになついちゃってるし」(笑)

二宮さんの例えはたまにおかしいけど妙に納得する

「車がなつくんですか？」(笑)

そして私の緊張を悟ったように空気を柔らかく和ませてくれる

二宮「運転する人の癖ついちゃうから」

トントンっとハンドルを握ったらままの手が人差し指にハンドルを叩く

そんな些細な仕草ですら格好いいと思ってしまう私はどうしようもない

「道具と一緒ですね」

二宮「そうなの？」

「テーラーの道具もその職人の癖がつきますよ」

二宮「そうだ、このスーツ勝手に着てきちゃったけどいい？」

スーツの襟をつかみ悪戯に笑う彼

「後で確認させてもらっていいですか？」

スーツは勿論完成していて問題はないけど最後まで仕事はしたいし

彼には完璧な物を渡したい

二宮「勿論」

程無くして昼に来たホテルへつくとエントランスにいたホテルコートを綺麗に着こなしたドアマンがやってきて車のドアを開けてくれた

二宮さんも一緒に降りるとドアマンに車のキーをあずける

駐車場にもいかないのか…なんて庶民的な考えが頭を巡る

正面玄関口のラウンド上になった自動ドアをもう一人のドアマンがわざわざ先に開けてくれて

二宮さんと私を笑顔で出迎えてくれた

さっき私がお見合いに来た時もけして感じが悪いと言うわけではなく寧ろとても行き届いたサービスだとさえ思ったけど

二宮さんが隣にいるだけで格段に変わる

それは二宮さんの持っている地位と彼のいる世界だと思い知らされる気がして

彼と想いが同じだと舞い上がっていたけど

とんでもない人が自分の彼氏なんだと今更ながら気後れする気持ちに

ロビーを並ばずに彼の猫背な背中を見ながらついていった