彼のスーツを脱がす時 2 【NINO】 (ページ12)

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42.散らばるピース【side NINO】ページ12

大野「Aならお見合いに」

空気が突き抜け

「は…？」

床が落ち

掴まるものがないことに目の前が真っ暗…いや…真っ白になった

お見合い？

今、お見合いって言ったよな

言葉が出ない俺に確実に気づいているオーナーは

ニヤリと笑った

大野「そのネクタイうちのですか？」

唐突な言葉に一瞬何の事を言われてるのかわからない俺に

オーナーは俺の首もとに視線を向けた

ネクタイ

「え？あっ…はい」

Aちゃんが見立ててくれた深紅のネクタイ

大野「よく似合ってる」

どこか余裕のその言葉に何かが切れた

人をマインドしてもマインドされるのは性に合わないんでね

「あの、単刀直入に聞いていい？」

大野「どうぞ？」

「Aさんと貴方はどういう関係ですか？」

ずっと気になっていた二人の関係

始めは夫婦だと思っていたけど彼女の指にはその証しになるものもなく

仕事がら外している事も想定内だったけど

食事に行った夜彼女のマンションはあきらかに単身者向けのマンションだった

そして彼女は既婚者なら男の誘いにどんな理由があってもついていく女じゃないからだ

それなら

そんな期待を抱いて縮めた距離も

あの夜簡単に砕け散った

色んな事が落としたパズルのピースのように散らばって

それを頭で一生懸命組合せても

一向にそれが完成することはなくて

そんな俺に

大野「それを聞いてどうするの？」

急に声色かえて鋭い視線に俺を見る目の前の人に我にかえされた

「どうって…」

大野「Aを泣かせる気？」

泣かせる？

俺が？

寧ろ泣きたいのはこっちだ

「違っ…俺は…貴方とAさんがそういう関係なのかと思ってて…だから…でも、お見合いって」

それが声と言葉に現れる

振り回される感情に疲れるのに

逃げることを許してくれない

黙ったままに俺を置いて店奥に消えたオーナーは

間もなく戻るとその手には何かを持っていた

大野「Aは貴方に本当の気持ちを知られるのが怖くて今日お見合いに行ったんです」

目の前に出された

リボンのかかった箱

「これは？」

無言のまま受けとれと目だけで訴えたオーナーの手からそれを受けとると

真意のわからないままそれをそっと開けた

「…ネクタイ」

そこには

グレーの上質なネクタイが綺麗におさまっていた

身につけるものに興味なんて全くないけど

一目見て心が動くような感覚だった

大野「それがAが本当に貴方に似合うと思ったネクタイ」