彼のスーツを脱がす時 2 【NINO】 (ページ26)

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56.幸せのループ←3/12 ページ26

ベッドルームであろうその部屋から私に視線を戻した彼は私の頬を簡単に熱くさせる

「へっ」

そして色気も何もない間の抜けた声しか出せない私

「あっ………の…えっと」

そんな私を見た彼は笑いを堪えるように口元を手で隠すと

悩ましげに私を見つめて

小さな咳払いに口にした白ワイン

二宮「でも、何もしなくとも貴女といるだけで幸せなのも本当」

優しく瞳を歪ませそんなことをサラッと言うから

「二宮さん」

我が儘な心は何もないことに安心して残念だとすら思ってしまう

二宮「俺達、まだ何も知らないじゃない？」
　
「え？」

器用に前菜にフォークをさすと

二宮「好きな食べ物とか普段は休みの日何してるとか…そういう当たり前な事」

悪戯な笑顔に口にした料理にイマイチな顔をする

「はい」

二宮「Aちゃんのこともっと教えて？」

「はい」

二宮「因みに俺はこういう料理は苦手」(笑)

綺麗に彩られた料理に子供のように舌を出す

「えっ！？」

二宮「庶民的に育ってきて急に舌だけセレブにはなれないでしょ？」

茶目っ気たっぷりなウインクに

遠いと思った距離を彼は簡単に縮めてくれるから

「そうなんですか？」(笑)

好きが溢れて愛しい気持ちに胸が苦しい

二宮「やっと笑った」(笑)

そしてそんな風に言って笑う無垢な彼の笑顔に

溢れた気持ちは焦がれていく

「…え？」

二宮「ずっと固まった顔してるから」

やっぱり顔に出てたんだって今さら隠しても遅いけど前髪を直すふりをして顔を隠した

「ごめんなさい」

二宮「何で、謝るの？」

「いえ…つまんないですよねきのきいた話も出来ないし」

言ってもそんなに恋愛経験が豊富な訳じゃない

今まで付き合った数少ない彼氏達も所謂お友達の延長線のようなものだった

二宮「きのきいた話なんていらないよ」

「え？」

二宮「居るだけで意味がある寧ろ言葉がなくとも視界にいるだけで高揚するのが"好き"って事でしょ？」

「はい」

二宮「Aちゃんが例えばその料理を食べて美味しいって笑ってくれるだけで満足だよ」

私はそんな事を言って幸せそうに笑う彼を見てこの上ない幸せを感じる

「正直…味がわからないくらい緊張してます」

彼に遠慮し過ぎてたと気付き素直に言った言葉に

二宮「そっか」(笑)

楽しそうに笑ってくれる彼を見てまた幸せだと思う

「でも…」

二宮「でも？」

「幸せ過ぎて苦しいです」

二宮「参ったな」(笑)

「私も参りました」(笑)

幸せのループに溺れそうだ