50.オチのその先【side NINO】←2/7 ページ20
「なら…貴女がスーツを脱がしてよ」
我ながら何言ってんだろって…
でもそんな可愛い顔してそんな事いわれちゃったら
どうやったって止まれないでしょ
A「え……っ……」
掬い上げる華奢な指は飾り気なんて1つもないけど
努力の証と言える彼女の手は誰よりも綺麗だ
ほら…って促し
彼女の手をボタンに導く
職業柄さすがなのか
滑るように滑らかに外されるボタン
前が開かれると誘い込むような瞳が俺を一瞬上目使いに見た
キスしたい衝動を抑えるのがやっとで
見下ろす彼女に下がった前髪を顔を上に上げて流れ落ちるようにしてよけた
部屋の高い天井に
彼女に聞こえないように息を吐く
胸板に触れるか触れないかに這わせるようにスーツのジャケットに侵入させた手
やたらに厭らしく思えるけど
彼女はなれたように肩からジャケットを下ろし自分は後ろに回ると俺の袖からそれをスルリと脱がせた
1分もかからないその工程が何十分にも焦らされるような感覚
なのにシワにならないようにジャケットの襟を持ち俺の前に戻ってきた彼女は
照れているものの満足そうで
焦らされてるのは俺だけ？って…
A「二宮さんっ」
彼女の首の後ろに手を回しうなじに這わせた手にグイッと顔を引き寄せる
「…いつもこうなの？」
仕事なんだから俺が思ってるような疚しい気持ちなんて当たり前だけど彼女あるわけもなく
俺が言ってる意味なんてわかるわけもない
数センチの距離に目が溢れ落ちそうなくらい瞼を見開く彼女
A「あ…っの」
キスまであと5秒
「それとも俺にだけ？」
覚悟を決めたのかキュと瞼を閉じた彼女が可愛くて
思わず緩む顔に小さく笑うと
彼女の唇に自分の唇が触れるその時だった
静かな部屋にバイブ音が響く
「こういうオチ」(笑)
犯人は俺のポケットにいた
A「あっ、あの？」
スマホをポケットから出すと
「ごめんね」(笑)
会社からで
A「いえ、早く出てください」
それに気づいたAちゃんは慌てて俺に背をむけた
「はい、もしもし」
電話は小山からで
直ぐに会社に戻らなければならない要件だった
「Aちゃん、ごめん戻らないと」
本当なら彼女も連れていきたいくらいだ
A「いえ、私は大丈夫です」
俺のスーツのジャケットを広げる彼女は優しく笑う
身体に負担が全くかからないようにスムーズにジャケットを羽織らせてくれると
彼女は躊躇いがちに言った
A「ネクタイ、結び直してもいいですか？」
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作者名：2-38
| 作成日時：2018年1月16日 10時
