06.人材←5/21 ページ7
「ひゃっ」
急に頬にあてられた冷えたビールの缶
二宮「まだ終わりそうもない？」
作業部屋で今日のぶんの帳簿と仕入リストの更新をPCでしていた私に幸せを差し入れしてくれた彼
「今夜は私が二宮さんより後にベッドに行く予定です」(笑)
二宮さんはもうお風呂に入りあとは寝るだけのようだ
二宮「そっか…それは残念」
くしゃっと撫でられた頭に簡単に元気がもらえる
部屋から出ていくと思った彼は部屋のすみにある椅子を片手にとると
「にっ、二宮さん」
私の目の前においてあったノートパソコンをとり膝の上にのせ
二宮「か、し、て？」
子供のような得意気な笑顔に
「えっ」
私には神様にも見える早さに数字やら文字やらを打ち込んでいく
二宮「こういうの、やってくれる人雇うのはどう？」
あっという間に終わらせた彼に言葉もなく
「そんな…」
確かに仕立てとは関係ない部分をやってくれる人がいたら助かるけど
人を雇う余裕が今後もあるのか不透明だし
誰かを雇う器が自分にはまだ無いような気がする
二宮「いい人材がいるのに」
不意に合った視線
「え？」
彼は私に意地悪く笑うと
二宮「ここに」
人差し指に二宮さん自身を指差した
「え……………っ冗談言わないでください、そんなの無理に決まってるじゃないですか」(笑)
笑いながら顔の前に振った手を
彼は時間を止めるように容易く捕まえる
二宮「あながち冗談でもないけど？」
彼はたまに彼自身の価値に気づいていない
「二宮さんにだなんて無理です」
彼を雇うなんて彼の年収を時給で考えたら私には到底払えるわけもなく
二宮「俺じゃAちゃんのお眼鏡にかなわない？」(笑)
彼に"甘える"それ以外の何者でもない
「そういう意味じゃなっ…！？」
私の言葉を最後まで聞かずに重なった唇
重なる一秒前無邪気に笑ってた瞳は
その一秒後色を変えて私を誘惑する強かな瞳に変わる
唇が重なっても伏し目に私を見つめるその視線に耐えきれずに目蓋をとじると
深く絡めとられた舌先に落とされる
惑わす熱い吐息に引き寄せられ
甘くたぐいよせる蜜にギュっと彼の手を握ると
ふわっと彼の唇が笑うのに唇が感じて目蓋をあけた
二宮「わかってるよ」(笑)
振り回される事が嫌なわけじゃなく
少しだけ
「意地悪です、本当に」
ほんの少しだけ悔しいっていう名前の幸せな感情に不機嫌に言った言葉に背を向けると
二宮「ごめんって」(笑)
彼はそれをわかったように後ろから私を抱き締めた
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作者名：2-38
| 作成日時：2020年4月4日 11時
