27.white day←12/16 ページ28
お母さんは先にチャペルへ
一人になった控室は何だか広く感じて
大きな窓ガラスに目をむけると
薄い結露の先にはふわふわと舞う雪が見えていた
控え目なノック
「はい」
スタッフ「お時間になりました、よろしくお願いいたします」
いよいよなんだ
「…はい」
私は二宮さん…
彼と歩んでいく
大野「A」
チャペルの扉の前にはブラックのフォーマルなスーツをスマートに着こなしたオーナーがいた
「オーナー」
リハーサルの時はジャケットを脱いでいたからオーナー自身が仕立てたスーツだと気づかなかったけど
見て直ぐに気づく洗練されたデザインに仕立て
大野「…マジ、神様って意地悪な」(笑)
冗談にも聞こえたバージンロードを歩く話は実現してしまった
「え？」
ベールごしに見えたオーナーは皮肉めいた笑顔に私を見て
大野「今日のお前を見せて他の奴に手渡せって言うんだから」
そして天を仰ぐように顔をそらした
「オーナー…」
私の言葉を遮るようにスタッフさんの合図が入り
そしてパイプオルガンの音が心臓を加速させる
出された腕にオーナーを見ると
ただ優しく笑う
ゆっくりとその腕に手をかけると
前をむくオーナーを見て私も前を見て深呼吸をした
ゆっくりと開かれる扉に
大野「約束しろよ」
パイプオルガンの音色に重ねた声は私にしか聞こえてなくて
オーナーを視界に見るもオーナーは"いくぞ"って唇を動かすだけに言うと
バージンロードへの一歩を踏み出した
大野「世界で一番幸せになれ」
その一歩にただ一言
だけど大きな答えをくれたオーナーに
「は…い」
私はバージンロードの先にいる
彼だけを見た
オーナーが二宮さんのために仕立てた
フロックコートのスーツ
今は新郎のスーツと言えばタキシードがメジャーだけど
クラシカルなアスコットタイは何処かおとぎ話の中のようで
式のイメージにはピッタリだ
そんな身長の高くない二宮さんには普通ならタイトな丈のタキシードが燕尾服を進めるだろうけど
フロックコートを選んだオーナーのセンスはやっぱり流石の一言で
二宮さんの後ろにあるチャペルの大きな窓ガラスには真っ白な雪の世界が広がり
真っ白なバージンロード
そこにいるブラックスーツの彼は本当に美しい
そんな彼に一歩
また一歩と加速する鼓動を抑えながら近づくのに
近づけば近づくほど二宮さんがぼやけていく
28.シンクロ【side NINO】→←26.ウェディングベール
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作者名：2-38
| 作成日時：2020年4月4日 11時
