26.ウェディングベール ページ27
ワイナリーに近づくにつれ
降る雪がハッキリとしていく
車からおりると寒さよりも吐く息の白さに驚いた
今年は暖冬なのか東京では積もる程の雪もなく
今日も久々の雪
3月14日
ホワイトデー
まさに真っ白な日になった今日
東京から離れたこの場所の雪景色にも胸がときめく
小山「足下気をつけてくださいね」
「すみません、ありがとうございます」
後部座席のドアを先におりた小山さんがあけてくれると紳士的に出された手に自分の手を重ねた
控室に入ると間もなくリハーサル
そしてまた直ぐにしたくのために控室へ
二宮さんとも
そしてオーナーとも殆どゆっくり話も出来ず
スタッフさんにされるがままに進められていく
ヘアーメイクが終わり
ドレスを
ウェディングドレスもこれに決まるまでは本当に時間がかかった
デコルテまでシアースクープネックになっていて
そこからは繊細なレースの長袖
ふんわりしたプリンセスラインではなくマーメイドコートレースのウエディングドレス
どれも自分には大袈裟なものに見えてしまい
これを見つけた時にはやっと巡り会えた１着だった
スタッフ「お母様を呼んで参りますね」
「はい」
目の前にある姿見に映る自分が別人のように見えた
そんな別人の自分を素直に″綺麗″だと思えたのは二宮さんとの未来が幸せになると確信できるから
鏡の自分の頬に触れると
ノックの後にドアが開く
母「A」
何でだろ
「お母さん」
意味もなく滲む視界
でも意味がないわけない
有りすぎて言い表す事ができない感情
母「すごく綺麗よ」
慌てて出したハンカチに目頭をおさえたお母さん
「ん…………ありがとう」
せっかくしてもらったメイクが崩れてしまわないようにと必死に涙をこらえた
スタッフ「それではお母様、よろしくお願いいたします」
お母さんの前に頭を下げるとふんわりと被さるベール
ベールダウン
ウェディングベールはウエディングドレスには欠かせないアイテムだけど
それには意味もちゃんとあって
最もポピュラーなのは、邪悪なものから身を守る魔除け
だけど私は
花嫁の頭部を柔らかく包み込むウェディングベールは、母親の愛情の象徴であるという説の方が好き
結婚式は親からの巣立ち
花嫁のベールは花婿に身を預けるその日まで
娘を守り通したという親の愛の証にも思える
顔をあげるとそこには柔らかく笑う
優しいお母さんの笑顔が見えた
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作者名：2-38
| 作成日時：2020年4月4日 11時
