彼女のルージュを落とす時１ (ページ21)

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20.小悪魔さんページ21

まただ

スクッと立ち上がった彼は

強引に人を追い込んだと思ったら

松村「すみません、いきなり来て失礼な事言ってるのは重々承知の上ですがお願いします」

座る私に頭のてっぺんが見えるくらいに頭を深く下げる

人手は足りてないし

結婚式までにはある程度業務になれてくれると助かるわけで…

「…うちのお店、松村さんがきっと面接で行かれた会社みたいにお給料だせませんよ？」

松村「はい、大丈夫です!」

二宮「で、雇っちゃったわけ？」

ベッドの上に胡座をかいて座る彼は眼鏡の奥の瞳を細め松村さんの履歴書を見ていた

「…はい」

機嫌が悪くなるのは想定内

私も感情的に選んでしまった事に今さら心配になってくる

深い溜め息に眼鏡を外し、目頭を指先にキュッとおさえる彼

二宮「脅しに脅迫とはいい根性してるな、そいつ」

「おっ脅しに脅迫って、そんな」

否定しきれない

二宮「気に入らないし」

ゴロンっとベッドに肩肘をついて寝転ぶ彼は呆れ顔に私を見る

…ですよね

二宮さんが私ならきっとこの選択はしなかったって思う

でも

「何か私と重なって見えちゃって」

二宮「Aちゃんとコイツが？」

「オーナーのお店で働きたいって行った時、私もアポなしで行って、押しきった感じだったので」(笑)

そう

何だか昔の自分を見ているようだった
あてもなく無茶をできるのも若い時だけ

そんな時

見返りなく手を差しのべてくれる大人がいたなら…

私にはオーナーもいて

今自分の夢を実現できたのは二宮さんがいてくれたから

二宮「…………」

黙りな彼

私もベッドに上がり彼の横へ正座して座る

「二宮さん？駄目ですか？」

二宮「駄目も何も店のオーナーはAちゃんで決めるのはAちゃん」

「でも、″気に入らない″って」

二宮「男、高学歴…おまけにイケメン？気に入らないに決まってるでしょーが」(笑)

「二宮さんが１番です…っきゃっ！？」

言いかけた言葉に身体ごと引き寄せられ

彼の身体の上に倒れこむ

体重をかけてしまう事に慌てて身体を起こすも彼の腕にガッチリ捕まえられ起き上がれない

彼を見下げた私の落ちる髪をすくいあげるように耳にかけてくれると呆れたように笑う

二宮「いつからそんな小悪魔になったの」(笑)

「こ、小悪魔！？」

二宮「前なら″そこに不機嫌になったの？″って思いそうなものを…そんな事言われたら不機嫌にしてられないじゃん」

「そんなつもりじゃ…」