彼女のルージュを落とす時１ (ページ15)

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14.チョコレートページ15

ワイナリーまでは高速道路を使って2時間程度

山に囲まれたそこは東京よりもさらに気温が低く

車から出ると一気に冷える身体

だけどワクワクした気持ちに寒さも平気で

無条件に出された二宮さんの手に手を重ねると繋がる指先に彼は優しく笑う

向かう先にはまるで童話に出てきそうなレンガ造りの建物が温かく光っていた

見上げれば満点の星

そして目の前には愛しい人…

二宮さんは

いつも私を素敵な世界に連れていってくれる

そして今夜もそれはかわることはない

「すごい！」

ワイナリーに入ると想像以上に中は広く
並べられたワインの樽の数に驚いた

二宮「銘柄、年代にわかれてるから気になるものがあれば試飲して」

「はい」

私が自由に試飲をしている間

二宮さんはビジネスモード

ワイナリーのオーナーさんと難しい話をしていた

一通り私の役目を果たすとあとは交渉や契約の話だときいて私は席をはずした

昼はレストランをやっているその場所をオーナーさんが待つのに寒いからとわざわざ開けてくれた

煖炉のまきがパチパチと音を鳴らしそれを静かにききながら窓の向こうに見えたライトアップされたチャペルをぼんやり眺めて

手の中にあるどうしようか迷っているものに目を向けた時だった

ドアがあく音がして寒さに身を屈めて入ってきた二宮さんに咄嗟にそれを後ろ手に隠す

「二宮さんワザトですか？」(笑)

誤魔化せただろうか笑う顔がひきつらないようにともう片方の手に持ったワイングラスに口をつける

私の問いの意味に気づいている悪戯な笑顔の彼は

二宮「ん～？」

私の横に並ぶと夜空を見るように窓に顔を近づけた

「だって、飲んだら運転できないし…だったら小山さんに運転頼んで来ますよね」

そう

本来″仕事″が理由ならそうしていたはず

二宮「バレた？」(笑)

彼が運転する時点でこの仕事は矛盾しているからだ

「…ありがとうございます」

始めから″デート″だったんだって

二宮「ん？」

数時間だけでも彼と何処かへ出掛ける事は私には本当に特別で

「とっても楽しかったから」

だからこそ

二宮「そっか」

余計に後ろに隠した物を出しづらくなる

「あの…」

でも、もう隠すに隠せない状況で

二宮「Aちゃん？」

「本当は今日、二宮さんが好きなもの作ろうって思ってたんです、でも、その」

言い訳する言葉を並べるほどに

ああ

私ってやっぱり彼女失格だなって