彼女のルージュを落とす時１ (ページ14)

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13.残業ページ14

二宮「お姫様、お迎えにあがりましたよ」

「今行きますっ」

お店の閉店時間にはまだ早い時間

作業台にある型紙をお客様のファイルにまとめ

急いでコートとバックを手にする

二宮『一緒に来て欲しいところがあるんだ』

それは今日のお昼過ぎにかかってきた電話

バレンタイン用のギフトをしあけだ後だった

『お仕事ですか？』

二宮『実は新しいレストランが春にオープンするんだけど、ワインの仕入れをしたくて意見を聞かせて欲しいなって』

ワイナリーと聞いただけでワクワクするけど

『ワインですか？』

今日は2月14日バレンタイン

二宮『ワインはAちゃんの方が好きでしょ？』

今朝出掛ける前には帰りが遅いと聞いていたし予定通り

二宮さんの好きなハンバーグを作ろうと決めていた

『好きは好きですけど、私素人ですよ？』

でも仕事とはいえ

二宮『その素人の声が聞きたいの』

二宮さんに会える

『それなら喜んで』

そう思うと仕事の疲れもとんでいった

「すみません、お待たせしました」

お店の中で待っててもいいのに何故か彼は外で待っていた

暖かな日が続いていた2月と言えど夜は当たり前に寒く二宮さんの鼻先が寒さに赤く染まっていた

二宮「可愛いから許す」(笑)

無邪気な笑顔にそんな事を言うから顔がいやでもゆるんでしまう

「もう、心臓に悪いです」

それを誤魔化すように二宮さんの首に私のマフラーをまくと白い吐息ごしに見えた瞳が何かをとらえた

二宮「これ、来た？」

そう言って彼が指さしたのは事務的な仕事をしてくれる募集のポスター

「何人かネットの方では来たんですけど…」

ネットの方は櫻井さんが見てくれていて

二宮「イイ人がいない？」(笑)

「いえ、皆さんうちのお店で雇うなんて勿体無い方ばかりで」

櫻井さんのお眼鏡にかなうだけあってハイスペックな方達ばかり

どの人も事務作業は勿論、スーツの知識にも長けた人ばかり

そんな方達を私が雇うのは何だか気が引けるわけで…

二宮「Aちゃんらしいね」(笑)

不意にクシャりとなでられた髪

「え？」

二宮「いや、まだ募集かけたばっかだし、ゆっくり決めればいいよ」

「はい」

二宮「行こうか」

出された冷たい手に手を重ねると

停めてあった彼の車へ

「今日は二宮さんが運転ですか？」

てっきり運転は小山さんかなって

二宮「この時間だと残業代つけなきゃだしね？」(笑)

残業代なんて二宮さんが気にするわけもなく
彼の優しさだと直ぐにわかる