彼女のルージュを落とす時１ (ページ24)

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23.アイツの弱味ページ24

松村くんは気を使ってくれたのか前言撤回と言わんばかりに早々に帰っていった

昔は当たり前だった

オーナーと私

二人だけの空間に時間

お店の片付けや休み明けの準備をしている間ずっとオーナーはお店を買いました色々と見てまわっていた

「オーナー、珈琲どうぞ」

応接用のテーブルにカップを置くとかけられたスーツから視線をこちらに向けたオーナー

大野「ああ、ありがと」

ゆっくりと椅子にすわると湯気の出るカップに唇をフーッと尖らせるオーナーは以前と変わらずに何処か子供のようで自然と力が抜けた

「いつ日本へ？」

イギリスのお店の事もあるし結婚式にはギリギリになるだろうって

大野「さっきだよ、ホテルに荷物預けてからここに直行した…」

続く言葉を何故か濁すように何処か呆れ顔に笑ったオーナー

「オーナー？」

大野「いや」(笑)

「なんですか、気になるじゃないですか」

大野「いや、よく許したなって」(笑)

「え？」

大野「さっきの…″松村くん″？だっけ」

まさかそれをオーナーに言われるとは

大野「二宮さんがよくここで働くのを許したなって」

許す…っとは違う

二宮さんはきっと快くは思っていないのは私にもわかるわけで…

「それは…」

大野「許したってよりかは許せざるおえなかったんだろうけど」

「オーナー」

大野「あいつの弱味はAだからな」(笑)

珈琲を飲みながら笑うオーナーに全てがお見通しなんだろうとそれ以上何も言えなかった

それからは結婚式の話はなく

お店の事

スーツの事

オーナーにはまだまだ教えてもらいたいことはあって

それは

あの夜に空いたままの心の場所を埋めていくようだった

大野「珈琲ご馳走さん、出るなら家まで送るよ」

尽きない話

でも明日は特別な日で

長々と話しているわけもいかず

おかわりをすることのない空の珈琲カップを受けとると

「はい」

お店をあとにした

お店からは何を話すわけでもなく

吐く息の白く霞むオーナーの後ろ姿をただ眺める

大野「相変わらずスゲーマンションだな」(笑)

マンション前につくとマンションを見上げるオーナー

「日本にはいつまで？」

大野「18日まで」

ハネムーンから帰ったらもうオーナーは日本にはいない

「18日…」

それにしても直ぐにイギリスに戻るのかと思っていた

大野「高木さん覚えてる？」

「高木さん…って学長の？」

高木さんとは私が通っていた服飾専門学校の学長だ

大野「ちょっと食事でもってね」(笑)