偽りの愛。 (ページ28)

今日:1 hit、昨日:11 hit、合計:357,115 hit

5 ページ28

.

あんな風に接されたのも、祈られたのも、初めてだ

頭を埋め尽くすのはあの日の出来事

名前は？

歳は？

学校は？

俺は何一つ知らない

あるのはこの黄色いハンカチと

唯一の手掛かりであるチェ不動産と言う会社だけ

カタッとパソコンのキーボードを叩く

チェ不動産…

唯一の頼りであるその名前を打ち込み、検索結果を待つ

あらゆる方法でその会社について調べ上げた

社長はチェヨンミン

先代から続く街の不動産屋か…

現在は社員26名

写真も写っているから、やはりあの少女の父親で間違いないらしい

「場所は…」

住所を確認し、その手を止めた

この場所って…

「ふっ…」

どうやら縁はあるらしいな

止めていた手を動かし、手前の受話器を取った

数回のコールで相手は電話に出る

「俺だ。例の新事業開発の件だけどな…」

《はい。来週の役員会でほぼ決定になると思います》

「早急に始めてくれ。それからビル建設予定地の範囲をもう少し広くしたい」

パソコンに写る地図を見つめながら、秘書にそう告げた

《は、しかし、今からでは…土地の所有者との関係もありますし…》

「金はいくら使っても構わん。チェ不動産…あの会社を全て買い取って、建設範囲を広げる」

《ですが社長…》

「分かったな？」

有無言わせないそれ

秘書は間を空けて返事を返した

さて、

これからだ…

.