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「何言ってんだ、お前」


俺は泣いてなんか…


「凄く悲しそうだから…」


ハンカチを差し出したまま、少女の瞳が俺を捕らえた


「………」


無意識に、そのハンカチを受け取る

すっかり湿って、使い物になりはしない

そんな俺の行動に少女は笑顔を見せた



「お兄さんにも、幸せが待っていますように」


「呪文か?それ」


「違います。お祈りしてるんです」


変なガキだ…

こんな俺に話し掛けて、ハンカチ渡して

それでもさっきまでの気分よりは、幾分ましか…



「お前…」


“名前は?”


声を出そうとした瞬間


「おーい、A」


「あ、お父さんだ」


少女は声のする方に振り返った


「そろそろ帰るぞ」


「うん、今行く」


チラッと俺に目を向けた後、少女はそのまま走り去って行った

数メートル先にいる父親の元へ

車に乗り込み、その場を後にする


一瞬車の車体に見えた文字



「“チェ不動産”?」


あの少女の父親の会社だろうか…


「何も聞けなかったな…」


渡されたハンカチを見つめながら呟く


名前も知らない少女

その出会いが、俺の人生を変えた



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作者名:ポツコ | 作成日時:2016年12月8日 20時

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