其の陸 ページ8
Aside
『…なおっ、た？』
？｢…っ、礼を言う｣
私の腕の中でモゾモゾと動きながら言う彼になんだかおかしくて口元が綻ぶ。
『お礼を言われることなどしてませんよ、私は新しく就任した審神者です。以後宜しくお願いしますね。』
大｢大倶利伽羅だ。馴れ合うつもりはないが、宜しく頼む。｣
これがツンデレというやつなのか、と考えていれば彼は気まずそうに腕の中から言う。
大｢…離してくれないか、苦しい｣
『ｱｯｺﾞﾒﾝﾅｻｲ』
あまりにも収まりが良くて、と言うのは野暮なので言わないことにした。
加｢主〜、とりあえず飲み物持ってきたよ…って大倶利伽羅いたの！？主何もされてない！？｣
飲み物をひっくり返すのでは？という勢いで詰め寄りこちらを心配してくれる清光さんはありがたいのだが、大倶利伽羅さんの心外だ…みたいな顔があまりにも切なくて目を少し逸らす。
『手入れ、？と言うのでしょうか。を、大倶利伽羅さんにさせていただいたのです。』
加｢そういう事ね、良かったね、治って。｣
大｢嗚呼、そうだな。｣
加｢…いい機会だから、もう言おうかな。…主｣
いきなり改まって、清光さんがこちらに向き直り正座する。
私も釣られるように、しっかりと正座して向き合う。
加｢来たばかりで申し訳ないんだけど、皆を、治して、助けて欲しいんだ。｣
お願いします、と深深と下げられた頭。
今まで裏切られて、傷つけてきた人間を、まだ尚信じようとしてくれる清光さん。
断る理由も何も無かった。
『清光さん』
穏やかな声で呼びかければ、彼がおずおずと頭をあげる。
『断る理由も、なにもありません。
私は貴方達の主です。貴方達の為に、有る人間です。
私に、貴方達の大切な仲間を助けさせてください。』
私が向き合って真剣に告げれば、ぽろぽろと涙を零しながら、清光さんは｢ありがとう｣とそれはそれは美しく微笑んだのだった。
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作者名：柑橘 | 作成日時：2022年7月22日 0時
