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拾陸話 友人 ページ17

いつのまにか隣に現れた女の子に黒百合は目を見張り、シロに至っては大きく口を開いている。
あずき……と言ってたっけ。
そのあずきさんが口を開いた。
「なによ。あたしがここにいたらいけない?」
名前の通り小豆色の髪を揺らしてそう訊ねる彼女の顔にはイタズラっぽい笑顔が浮かんでいる。
「そういう訳じゃなくて」
「ああ、あずき姉ちゃん?!」
黒百合がなにかを言おうとするのに被せるかのようにようやくシロが言葉を発した。
「そうよん。で、どうしたの、すっかり変わっちゃってさー」
「ぁ……えぇと。ちょっと仕事で……おばさんとおじさんと碧は元気?」
質問に流暢に返して黒百合は短い服の裾をぎゅっと引っ張る。
その拳は震えるほどに力を込められていた。
そういえば流暢に話すのは動揺してる証だったっけ。
思い返しながら息を詰めて目の前のやり取りを見つめる。
後ろの箱の中で禰豆子がごそりと動いた。
「なんの仕事してるの?父さんと母さんは今も元気に仕事してるよ。碧は反抗期真っ盛り!」
やれやれと肩をすくめたあずきさんに黒百合はほっと息をつく。
「そっか。せっかく会えたけど、仕事あるから、行くね」
「あずき姉ちゃん、またな」
あずきさんの質問を無視して二人はこの場を立ち去ろうとした。
それを許すはずもなく、あずきさんがガシッと腕を掴んだ。
「まぁまぁ、答えられないような仕事してるのはわかったから、うちに遊びに来なさいよ。みんな寂しがってんだからさ。もちろんあたしもね!」
屈託なく笑ったあずきさんの言葉にシロの笑顔がひきつった。
黒百合もどこか居心地悪そうに顔をそらし、吐き出す。
「い、いや、急いでる、から、さ。そう、だから行かなきゃ」
「あらあら、癖がなおってないのねー?あんたが顔を背ける時は、基本後ろめたいこととか嘘をつくときよ」
うぐっ、とうめいて黒百合は脱力したようにかくりとうつむいた。
シロも姉ちゃ〜ん……というように途方にくれた顔をしていた。
「ええと、私、お二人の仕事仲間でAと言います。失礼ですがどのようなご関係で……?」
放心から解放されたAさんが口を挟む。
「あ、ごめんなさいあたしったら!黒百合と千白の友人のあずきです!」
痛くなってきた頭でぼんやりと俺はシロは千白だったな……と思い出していた。
それにしても友人。あずきさんと黒百合達が?
二人は後ろめたそうに視線をあちこち泳がせていた。
後ろめたい、は後ろ目痛いだったか。
どうでもいい知識を頭の中で再生した。

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作者名:まっころん x他1人 | 作成日時:2019年8月31日 11時

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