拾弐話 逃走 ページ13
びびび、吃驚したぁ……
私はいつも通りの無表情で、心配するA
に地面に座りながらへらへらと笑っている炭治郎を眺めていた。
ちょっとやりすぎた?
いや、私は悪くない。
「……すまない、動揺した」
悪くないという結論を出したわりには口が勝手に動き、謝罪を言葉にする。
そんなふうに自然に言葉がでたのは久しぶりだった。
いつも少し考えてから言うから。
「いや、俺が悪いよ……こちらこそ、すまなかった」
立ち上がって服をはたいた炭治郎がいつもの笑顔で笑う。
隣でシロがにやにやしている。
鬱陶しい。
私は慌ててそっぽを向きながら言った。
「……お互い様」
「そう、か?」
「うん」
「分かった、じゃあそう言うことで」
スッと炭治郎が手を差し出してくる。
……なんだろう。
ひとまずポンと手を置いて首をかしげてみる。
隣でシロがぶっふと吹き出している。
後でしばこう。
炭治郎はむやみにあわあわして顔を赤くしながら言った。
「握手のつもりだったんだが……黒百合は可愛いな!」
「ほんとにねええええ!なんでそんなに可愛いの?!」
炭治郎と善逸に言われて目を白黒させる。
え、え、握手だったの……?
耳に熱が集まり慌ててシロの後ろに隠れた。
「そうでしょうそうでしょう!黒百合様は可愛いのですよ!」
そしてなぜお前が威張る、A。
胸をはってどや顔で言うAに心の中で突っ込みながら浅いため息をつく。
シロまでけらけらと笑いながら言った。
「はは、そう、俺の姉ちゃん可愛いんだよな」
「……あー、もう!そういうのいいから!帰るよ!!」
動揺した私の舌と口はいつもと違い滑らかに動く。
怒鳴って、前を走り出す。
「あっ、頃百合が逃げたぞ!」
なんだ頃百合って。
私は黒百合だ。
追いかけてくる伊之助の声に無声で言い返しながら走って山をおりた。
その時にはすっかり日暮れになっていて。
私たちは付近の藤の家紋の家で休ませてもらうことにした。
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作者名:まっころん x他1人 | 作成日時:2019年8月31日 11時