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拾壱話 羞恥 ページ12

帰り道、シロの行きと違う道にいこうぜっ!という提案により、黒百合が固まっている。
「いや、私は、あと、で合流す、るから、先に、行って……」
堂々とした常の姿とは異なり、一番始めに会ったときのようにたじたじとしている。
目の前には明らか不安定そうな橋。
風に揺らされてきしんでいた。

「……姉ちゃん早く克服した方がいいんじゃないか?」
「黒百合様……まだなんですか」
「だ、だって……」
家族に呆れられ、そっぽを向く黒百合。
「どうしたんだ?」
「別に「姉ちゃんたけぇの苦手なんだよ」……ッシロ!」
慌てたように弟の口を塞いだがもう遅い。
俺も、善逸も、伊之助までその事実に口をあんぐりと開けた。
え、黒百合、高い所苦手なのか?
「……悪い?」
「あっ、いや、全然!」
うーっ、というようにこちらを上目遣いで睨み上げてくる。
可愛いなぁとは思うが。

「……じゃあ俺が抱き抱えていくよ!」
「「は?!」」
「?!」
「おお、炭治郎ってばダイタン」
善逸とAさんがおかしな声をあげて、黒百合が無言でびくりと、シロの後ろに隠れる。
それを見ながらにやにやとシロがからかいを含んだ声で言ってくる。

善は急げと俺は早速黒百合を抱き上げた。
ひゃっ、と小さく可愛らしい悲鳴をあげて黒百合が俺にしがみついてくる。
「たん、じろ、まっ、ちょっと……っ!」
「暴れたら危ない。掴まっててくれ」
俺は橋を渡っても大丈夫かもう一度確認した。
……うん、大丈夫そうだな。
長い橋の上を歩き出すと黒百合が更に強くしがみついてくる。

胸板の辺りに荒くなった息が当たりくすぐったい。
羽織越しに肩が痛いぐらいに握りしめられる。
これは悪いことをしたかと思ったのは、半分ほど渡ったとき。
風が橋をきしませる度にひっ、とか、やっ、とか小さな悲鳴をあげる黒百合がいつもと違い、とても弱々しいことに気付いたからだ。

渡り終え、黒百合を地面に下ろす。
力が抜けてしまったようでへたりこんでしまった。
「…………馬鹿。大馬鹿。怖、かった」
やっぱり俺を罵る言葉には力がなくて。
それより、俺は気になっていたことを訊く。

「それはすまない。それより黒百合、ちゃんと食べているか?酷く軽かったぞ?」
「食べてるっ!うるさいっ!」
「ぐぅっ?!」
恥ずかしかったようでがばっと立ち上がり、彼女は俺の頬を思い切りに張った。

それを見た善逸とシロ、伊之助が爆笑し、心配してくれたのは、Aさんだけだった。

今回は俺が悪い、かな?

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作者名:まっころん x他1人 | 作成日時:2019年8月31日 11時

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