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拾話 乙女 ページ11

俺達は、黒百合がおかしい反応をした理由が分からないまま鬼と遭遇した。
思わず体が強張る程の威圧感を発していた。
「じゃあ、頑張れ」
「気ぃ抜くなよー」
「頑張れっ!」
そんな中でも三人は平然と木に飛び移って
高みの見物の姿勢だ。
それを多少ずるいと思いながらも日輪刀を抜く。
善逸はいつも通り震えてわめいている。
伊之助はいつもと違って静かだった。
……?どうしたんだろう。
いぶかしく思いながら大きな声で鬼に名乗る。
「俺は鬼殺隊庚!竈門炭治郎だ!お前の首を斬る」
「大人しく切られてやるかよぉお!俺は三十人喰ったぁあ!」
そんなふうに威張り、余裕でいながら匂いは違う。
油断せず、しっかり構えている張り詰めた匂い。
俺達は一斉に飛びかかった。__善逸はいつの間にか気絶していた。
それから十分ほど。
俺達はボロボロになり、行きも絶え絶えになっていた。
な……んで。下弦が斬れない俺では、俺達では、駄目だというのか?!
いや、そんなことはない。俺は長男だ!諦めてはいけない!頑張れ炭治郎!
そう唱えて刀を支えに立ち上がる。
そのとき、ふわりと影がふってきた。
「仕方、ない。助けて、あげる」
軽く後ろを向いた影は黒百合だった。
黒百合は静かに刀を引き抜き、なんの気負いもなく構える。
「全集中雪の呼吸壱の型『牡丹雪(ぼたんゆき)』」
彼女はひらひらと舞う雪のように不規則に、縦横無尽に鬼の体を傷つけた。
まるで首を切り落とすことをためらうように。
だがそんなのは俺の思い過ごしだった。
「シロ」
「あいよっ!全集中、空の呼吸っ!『夕映え』っ!」
元気一杯にシロが鬼の首を刈る。
灰になる鬼。
不思議と鬼が灰になる時間が短かった。
俺達が驚きに言葉を飲み干していると、今まで静かだった伊之助がわめく。
「やっぱりな!俺がなにかをするまでもねぇ!」
さすが俺の子分だ!と騒ぐのであわてて口を塞ぐ。
「こらっ!失礼だぞ!……でも、凄かった!黒百合は雪の中にいる乙女のようだったし、シロはまばゆくてあまり見えなかった!」
「えっ、は……ぅあ」
「おーありがとな!」
俺が感激をそのまま口にすると木から降りてきたAさんに苦笑された。
「いやはや、炭治郎くんは絶対に人たらしになるねぇ」
え?俺はたらしている気はないんだが……
助けを求めて黒百合を見るとシロの後ろに隠れて首だけ出し、「……たらし」と呟いた。
背負っている禰豆子も箱をカリカリと引っかいた。
えええ……?俺の味方は……??

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作者名:まっころん x他1人 | 作成日時:2019年8月31日 11時

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