【呪術廻戦】とあるいかついカップルの話 (ページ5)

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「××行きの高速バスって、ここで合ってますか？」

「............あぁ、バス停わかりずらいですよね。ここまでならこのバス停で合ってますよ。切符買わなくても、現金払いできるので。」

「そうですか。ありがとうございます。」

　どうやら彼はバス停がわからなかったらしい。

　確かに、わかりずらい。A自身、高校進学でここ、仙台が乗り換えの中間地点となった時、バス停の場所に迷った。尋ねられたことも、これが初めてではなかった。

　男性は人の良い笑みを浮かべ、礼儀正しくお礼を言った。だが彼はAの後ろへは並ばず、バス停から少し歩いてエスカレーターへ向かい、冴英の視界から消えた。

　男性の行動に、冴英は少し疑問を抱いたが、自身の時計を見て、あぁ、30分も前だからかな、と思い直した。

　しかし、このシーズン、この曜日と時間帯は結構混む。冴英は「隣、いいですか？」と極力言いたくないタイプであったので、1番に並んでいたのだ。

____それに、あの制服。見覚えがあった。いや、見覚えがあるどころか、自分も着ていた。

　呪術師。彼は高専生だろう。キャリーバッグを持って1人、地方にいるということは階級は2級以上。彼女が＂今も＂高専に通っていれば、彼は後輩に当たる。懐かしい高専時代が脳裏を過ぎり、Aは思わず眉をひそめた。

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「すみません、隣、いいですか？」

　案の定、多くの人がバスを利用した。最初に並んでいたAは後方の2人席、窓側に無事座ることができた。

　そして＂また＂尋ねてきたのは、先程の高専生だ。長身ゆえ、屈むような姿勢の彼は申し訳無さそうにそういうので「えぇ、どうぞ。」と返事をする。

「ありがとうございます。」

　席に彼が座ると、思いのほか距離が近かった。これは寝れないな、と眠気を助長しそうなウォークマンとイヤホンを鞄にしまう。その代わりに小説を出した。

「あの、」

「.....はい？」

　身振りが大きいと彼の肩にぶつかってしまう。冴英は次はなんだ...？と思いながら、顔のみ、彼の方を向く。

「コーヒー、好きですか？」

「はい？好きですけど...」

　唐突にそう聞いてきた彼の手には、某有名カフェの紙袋。

その中からカップが2つ見えた。その質問の意味がわかったような気がして、返答したことに後悔する。彼がそういう人ではないと思いたいが、一度あったのだ。
いわゆるナンパで、カフェのドリンクを理由付けに来た人が。