涙の跡にキスを 【青】

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…え？


渡辺さん私の頭に何故触れているんだ？


目頭を押さえていた手が自然と離れていきパッと頭を上げてしまった。

そして、横を見ると渡辺さんは私の頭に触れたまま私の方を見ていた。

……なんだろうか、この沈黙は


「…あの」

そう声を出した瞬間くしゃくしゃと2回撫でられ渡辺さんの手は離れた。


「お疲れ」

「、お、お疲れ様です」

「何？その困り顔」

「…困らせているのは渡辺さんじゃないですか」


撫でられた所に触れながら渡辺さんの目を見て言うと
渡辺さんは私のおでこにコツンっと拳を軽く当てた。


「、痛っ」

「いい所に頭があったからさ」

「そこに山があったからみたいに言わないでください」

「お？いいね。その返し」


クスクス笑って椅子に深く腰かける渡辺さん

彼が何を考えているのか私には分からない。


帰る支度をしながらもまだ帰らない隣の渡辺さんを見て自然と手が止まった。

「おい、早く帰るぞ」

「渡辺さん」

「ん？」

「彼女でもない後輩にそんな事していると勘違いしちゃいますよ？」


こんなイケメンに彼女が居ないわけない

そんな事を考えながら帰る支度をする。
机の上にあった携帯を手に持ちバックの中に入れようとした時




「勘違いどうぞ」


「………はい？」


「その勘違いどうぞ？」


驚いてしまって携帯を床に落としてしまった。

どういうことだ？


勘違いどうぞってどういうこと？

携帯がゴトッと音を立てて床に落ちた。
それを見た渡辺さんは「何やってんだよ」と言って拾ってくれた。


「はい。携帯」

渡辺さんが携帯を私に差し出してきたが驚いてしまって私は動けずにいる。

そんな私を見て渡辺さんはふぅっと息を吐くと
私の頬にペチペチっと触れた。


「おーい？起きてる？」


「…二股はダメですよ？」


「はぁ？」


「だから、そういう事をすると彼女さん怒りますよ」


携帯を持ったままの渡辺さんは「はぁ？？」と困った感じに言った。

「あんた馬鹿じゃん」

「馬鹿って言った人が馬鹿ですよ」

「俺彼女居ないし」

「……いやぁ、嘘ですよ。居ないわけない」

「あ、俺の事かっこいいと認めてる？ありがとう」



なんだこの人

本当にいないんですか



はい。と渡された携帯を手に持ちバックに入れる。

渡辺さんはニコニコ嬉しそうに私の方を見ていた。


「…何か？」

「眉間にシワ寄ってるんだけど」

「さっき はぁ？？って言った時渡辺さんも寄ってましたよ」


「誰のせいだよ」

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