涙の跡にキスを 【青】

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頬に触れながら渡辺さんの言葉を聞いていると彼は私の耳を抓った。

「、痛い」

「まぁ、弄りがいはあるね」

「酷いですよ」

「あんたが断れなさそうとか嫌そうな時は教育係の俺が止めるから安心しとけば」


サラッとそう伝えると渡辺さんはテクテクと先に歩いていってしまった。

…なんだこれ


梅雨の終わりかけ

そんな夏を知らせる空気が通り過ぎていく。



今はほんの少し過ごしやすい筈のになんか変な鼓動がする。
…恥ずかしさのようなでもどこか嬉しいような


先を歩いていた渡辺さんは振り返ると私が着いてきていないことに気づいたのか戻ってきた。


「おい、ほら歩く」

腕を掴もうとしてきたが咄嗟に手を前に出して止めてしまった。

それを見た渡辺さんは一瞬驚き私の方をちらっと見てきた。


「…おい、どうした？」


「、か、帰ります。失礼しました」


ダメだ

この気持ち前に感じたことある



あの人で最後にしようと
怖いから忘れようって
なのに


「、なぁ、どうした？
なんかあんたおかしいよ？」

「お、おかしくさせてるのは貴方じゃないですか！
私帰ります、では」



一礼して走る。



どうしよう


『流石、ニエベの人事。
頼りになりますよ。Aさん』


あの人で最後だと思ったのに


「……どうしよう」












家に帰るとハガキが届いていた。

へぇー、結婚するんだあの二人

やっとじゃん


新郎新婦のところには岩本と矢笠の名前があった。


友人と元後輩の結婚か

… 幸せになれよという気持ちと出席しようかと悩む自分がいる。

いや、行きたい


康二も行くよな。

じゃあ、俺ら二人で行くか


ハガキに返信を書いていく。

友人の結婚式に呼ばれるとか


なんか、嬉しいな








結婚式の日は俺と康二2人で行った。

凄い綺麗な式場だな。

良かったなぁとふたりで話していると近くの会場だったのか目の前から綺麗な服装の女性が数人歩いてくる。


通り過ぎる際一礼しながら歩こうとしたが1番最後の女性が気になった。


落ち着いた色の綺麗な服で他の人達とは合わさらず1人後ろを歩く女性


「、ちょっと待った」


手首を掴むとその人はビクッと反応し俺の方を見た。

やっぱりな


「何してんの？」


「、ぇ、あれ」


「あ！宇原さんや！」


いつもとは違う化粧に服装で
なんか


「なんでここにいるん？」

「友人の結婚式でして。」

「奇遇やな！俺らも」



康二と話す彼女を見て口には出さないが綺麗だと思ってしまった。

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