お見合い相手の岩本さん 【黄】

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手を触れられびっくりしたが岩本さんは何か私の手に書いている

「…あの、何を」

「はい」


何か書けたらしく手を離されたので見るとそこにはファイトと書いてあった。

「ファイト…」

「蛍光ペンは書類への印とかに使うんだ」

「え？じゃあこの手のは？」

「え？手？」

「え？なんのこと？って顔しないで下さいよ」

「はははっ、ごめんごめん」


なんか遊ばれてる。

クスクス笑っている岩本さんを見てお見合いの時と比べると少しは心開いてくれているのかな？と思った。


…なんでファイトなんだろ


黄色の蛍光ペンで書かれたファイトを眺めていると岩本さんが書類を集めながら話し出した。


「企画課、大変だと思うけど頑張ってね」

「え、ありがとうございます」

「それと、話は変わるんだけど

またいつか話さない？」


「え？」

「もう少し矢笠さんの事知りたい」


これはもしやお見合いの時の話かな。


「岩本さん、同じ会社だと分かっても大丈夫なんですか？」

「え？なんで？」

「いえ、同じ会社ですし本当のお見合い相手ではないただの平社員ですよ？」

「そう思う？」

「え？」

「俺からしたら矢笠Aさんという女性がお見合い相手で

お見合い終えた今でももう少し知りたいなぁって思えるぐらい気になっているよ」



手に持っていたペンを落としてしまった。


それどういう意味ですか？
え？その言葉の意味まんまですか

いやいや、そんな訳ないよね？だってたった数時間話しただけだよ？

私のこと知りたいって言われた。
いや、無理だよ。だって私は友達の勧めで渋々行ったような酷い人だよ？


考えながら急いでペンを拾って立ち上がろうとしたら机で頭をぶつけた。


ガタッ


「、いっ…たぁ」


「大丈夫？！」

頭を押えていると岩本さんがしゃがみこんで私の傍に来た。


私の手に触れて私の方を見る目は慌てていて心配そう


「、大丈夫ですよ。ちょっと」

「すごい音だったけど」

「大丈夫です。ちょっと痛くて涙出そうになりましたけど無事です」

「それは良かった」


ペンを持って頭をさすりながら立ち上がると岩本さんは私の方を見て笑っていた。


「…何か？」

「え？いや、面白い人だなぁと」

「ぶつけただけじゃないですか」


「今度からは気をつけろよ？」


ははっと笑う岩本さんが私の方を見て話しかけてきた口調は凄く砕けていて彼の嘘偽りない話し方なんだと思った。



なんか岩本さんの新たな一面を知れてる気がするな。

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