隣の先輩【赤】 (ページ32)

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「西崎！」

声が聞こえ振り向くと重岡さんが走ってきた。

言わないといけない。
ちゃんと説明すればわかってくれる人だよ。

「重岡さん」

「なんでや！なんで」

「転勤は2ヶ月後なので大丈夫ですよ。
それに、自分は覚悟できてます。

だからそれまではよろしくお願いします。」

走ってきた彼は私の肩を掴み少しだけ声を荒らげた。

困った表情の重岡さんはどこか私も見ていて苦しくなる。

私の説明を聞いても彼は首を横に降り「嘘や」と呟いて下を向く。
肩に触れている手が少しだけ力強くなった。

「…仕方ないですよ。

大丈夫です」

「嘘や、大丈夫なわけない」

「本当に大丈夫ですよ。」

「そんな言葉聞きとうないわ！」

「私は、貴方と両思いになれたことがまだ嘘のような気がして…夢を見ているのかなって感じるんです」

重岡さんは顔を上げて私の方を見てきた。

走ってきたのかよく見ると彼の首元や額には汗が浮かんでいた。
…走らせて悪いことしたな。

「なんもしてないやん。
デートだってなんだって彼氏らしいことなんもしてへん。」

「…じゃあ、2ヶ月間のうちにしましょうよ」

「2ヶ月じゃ足らへんわ。

…俺から離れんでほしいもん」

重岡さんって意外な一面があると思う。

黙っていると重岡さんは私の手に触れた。
そして、私の耳元であることをつぶやいた。

…え

「……？」

「ほい、笑う笑うー。

今からデートしようや」

手を引いて歩きだした重岡さん

さっき

…なんであんなこと呟いたのかな

「どこか食べいこうかなぁ」

「近くに美味しい所ありますよ」

「ん？どこどこ」

重岡さんの事もしかしたらまだ上手く分かってないのかもしれない。

ご飯食べ終えて家まで送ってくれて

いい日だなと思えたがその数時間前に異動の紙貰ってるからなんとも言えない。

ベッドに入り携帯を開くとメールが1件

『今夜はありがとう

明日また会おうな』

こちらこそありがとうございました。
また明日

そんなメールを打つ

メールを見返してもいまだに苗字

…重岡さんがAって呼ぶのいつなんだろうか

稀に呼んでるけど

…明日はいい日であってください。

お願いします。

だから

あの人が悲しまないようにして下さい。

お願いします。

『我慢出来ずにいつか泣かすかもしれへん』

あの言葉の意味は

分からない方がいいのかな