隣の先輩【赤】 (ページ25)

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苦しくて苦しくて

涙が先に溢れていると重岡さんは黙って私の方を見て腕に触れてきた。

「っ、ぁ」

「大丈夫大丈夫

ようやってるわ。全部出してええから吐き出せ」

抱きしめてきた腕は優しくて

重岡さんの香りが近くて

「っん、すみ、ません」

「なんで謝んねん」

落ち着く

重岡さんは泣くのがおさまってきた私の背中を撫で資料を片手に何かを考えていた。

そして、ペンを持つと何かを継ぎ足したりして私の顔を覗きこんできた。

「笑顔が見たいなぁ。俺は西崎の笑顔好きやで？」

「、き、急になん、ですか」

「ほれ、笑え笑え」

何を言うかと思えば。
面白くクスッと笑ってしまうと重岡さんは私の頬に触れ笑顔だった。

「俺に聞いてええから

頼ってええからさ

もう泣かんで？」

「ははっ…はい」

落ち着いてきた。

重岡さんに頭を下げると重岡さんは私の方を見ながら笑顔だった。

いい先輩だな

難しいけど重岡さんの言葉を聞いたらどこかホッとする。

こんなことされたら

好きになりそう。

叶うわけないのに

何を考えてるのか自分よしっかりして

考えを変えようと重岡さんがペンで書いてた資料を見た。

『具体的に、5W1Hを意識して。』
『ここは残そう！』

たくさんのことが書いてあって書き方の例とかも書いてあった。

「ありがとうございます」

「大まかな事しか書いてないけどな。

お昼は食べへんの？」

「食べたら終わらなくて」

「部下が頑張ってる時に上司は食堂とか変わったとこやな。

…まぁ俺の所もか。

西崎、ちょっと食べいこ」

「…へ？
いや、あの」

食べたら終わらないのに

資料の方と重岡さんの方と交互に見て焦っていたら重岡さんは少し息を吐いた。

そして、私の手から資料を取り私の目を見た。

「行くで。」

資料を持ったまま先に歩く重岡さん

これでは仕事が出来ない為重岡さんの後ろを追いかける。

急いで財布と携帯をもって後ろをついていくと重岡さんは振り返り私の手の中にある財布を見て「ええのに」と声に出した。

「良くないです！」

「気持ちだけ受け取っときます。

食堂の裏メニュー食べさせたるわ」

「え、裏メニューってあるんですか？！」

「おぉ？食いついたな？
食堂のハンバーグ定食を食券で買って担当してくれる人にチーズって言えば少しだけ豪華になるで」

「初耳です！」

「裏なんでね。
他の人に言うなよ？」

「はい！」

楽しみだな。