隣の先輩【赤】 (ページ13)

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「終わったぁ…」

梅雨のジメジメした時期のある日

受付も終わり今日はここで帰ろうとなった。

ロビーの向こう側の外は雨が勢いよくアスファルトに打ち付けられていた。

傘は持ってきてるから大丈夫

でも予報じゃ晴れるかもって感じったけどこの季節分からないから傘持ってきててよかった。

準備も終え会社とドアから出ると屋根の下で誰かが立っていた。

「…あれ？」

よく見るとその人は重岡さんだとわかった。

携帯の方を見ながら雨が止むのを待ってる状態だった。

…珍しい

重岡さんの方に近づき私は声をかけた。

「重岡さん」

「？あ、西崎やん」

「傘忘れたんですか？」

「俺の見た天気予報は晴れって嘘ついてたんや」

そうきたか

面白い言い方だなぁと思い少し笑うと私は重岡さんに傘を渡した。

「へ？」

「私、折りたたみ傘あるので」

「いや、ちょっ、それはあかん」

「大丈夫ですよ。重岡さんの方が家遠いと思うので」

「いや、それでもや
それでも女の子を濡らすのは嫌や」

女の子

そんな単語久しぶりに聞いて驚いていると先輩は傘を開き私を下に入れてきた。

「俺がさすから一緒帰ろう」

「…でも」

「じゃあ、俺が西崎を送って。
その後この傘借りて帰るのは大丈夫やろ？」

重岡さんの言ってる事はどちらの悩みにも答えている。

だから

首を振ることは出来ない

黙って重岡さんの方を見ていると重岡さんは私の肩に腕を回して歩き出した。

そして少しだけ歩くと重岡さんは手を離した。

雨の音がうるさいのに傘の中では無音の空気が広がる。

重岡さんって時々凄く男らしいというか強引というか

行動力が凄くあると思う。

歩いていると重岡さんは私のほうは見ずに話し出した。

「受付は慣れたん？」

「あ、はい。」

「そうか。
また、企画課に帰ってくると思うけどその時は成長した西崎の事楽しみにしてるで」

「成長って

そんな凄くなってませんよ」

「なってるやんか」

重岡さんは笑顔でそう言うと私の腕を自分の方に引っ張り近づけた。

「濡れるで」

「重岡さんが」

「俺はええよ。
それよりも西崎濡れたら風邪ひくで？」

他人の方を優先

重岡さんの言葉に「ありがとうございます」と言うと普通に「いいえ」と言っていた。

もう少ししっかりした大人になって手助けできるようになろう。

多分それが私が今出来る事だと思う。