恋焦がれて【津田健次郎】

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キャリーケースを持って広いフロアーを歩く。


またキャリーケースはもう渡しとこうかな？

手荷物検査は後からにして


秋の肌寒い日なので上に灰色の長い羽織るやつを着る

丁度ぐらいかな


キャリーケースを渡して先に御手洗にでも行っとこうかなぁ



「A！！」



急に名前を呼ばれた。

え？


驚いて後ろを振り向くと抱きつかれた。


「…津田さん？」


声をかけた主の名前を呼ぶと。彼は息を整えながら私の目を見て答えた。


「馬鹿！！
急に居なくなるな！

なんで言わないんだよ！

俺は



頼りないのか！」


聞いたことない焦りと怒りと戸惑いの声。

私はただ黙って聞いていたが自然と口が開いていた


「…が、う」


「…ん？」

「違う

私は

貴方に迷惑をかけたくなくて


困らせたくなくて」


自然とぽつりぽつりと言葉が出るに反して両目からは今まで堪えてた涙が出てきた。

「っはぁ、

好き…だから

だから貴方には笑っていて欲しくて嫌なのを背負わせたくなくて

だ、だってもっともっと素晴らしい人は沢山いて

イタリアは遠いから居ない間に美しい人と結婚すると思ったんです。

と、遠いから

触れることもできないって


私は捨てられてもいいって…覚悟を決めたんです」


涙は床へと落ちていく。
この人を濡らすわけにはいかない。

離れて泣かないと


「…お前よりも素晴らしい人ってどこの誰だ。

俺は


そんな軽い考えでAと付き合ってるわけじゃない」


津田さんは私の頭に触れただ1度おでこに一瞬だけキスをしてきた。


「いつか会いに行く。

俺から会いに来てやる。


だから毎日連絡してもいい。

苦しい時や助けて欲しい時、楽しい時や嬉しい時

どんな時でも俺に甘えていいから


1人で抱え込むなよ。馬鹿」



今にも泣きそうな
でも、無理に笑顔を作って私の頭を撫でる津田さんは強い人だ。

いつもそう

私をまるで子供をあやすかのように優しく撫でる。


まだまだ


彼のことを支えれる力が私には無い。


私は涙を堪えて津田さんを見た後笑顔を浮かべた。

口の端を上げると声は出そうになる。


「…それは津田さんもですよ。


無理して倒れたりしないで下さいね。
私に愚痴を話していいですからね。

笑顔でいて下さいね」


飛行機の時間が近づいてきたためそう言って離れる


「…行ってきます」

「うん….

いってらっしゃい」



後ろを振り向いてはダメだ。

泣いてしまうから


私はそのままイタリアへと飛んだ。

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