【長編】こんな世界でも君が好き【終わりのセラフ】 (ページ13)

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10話　夢主の鬼視点ページ13

「長くなるだろうから、座りなよ」
と、ソファーに2人を座らせ、僕は向かい側に。

この話をする日が来るとはね。
できることなら、巻き込みたくはない。
「刹那？どうしたよ？」

頬を指で摘ままれ、むにぃ、と引っ張られた。
ちょっと！と手を払うと、暗い顔してたから、と言われてしまった。

そんな気遣い、しなくていいのに。

「で、クルルは何を話してくれたの？」
「…僕の妹についてだよ」
「妹？妹いるの？」

妹の話なんて、しなかったからね。
さて始めようか、長い前置きを。

僕が、空音の母親、風音に会うきっかけになった、

血の繋がりを捨て、新しい家族ができた話。

＿＿＿＿＿＿＿＿あの日は確か、雨が降ってた。

『姉様？姉様～？』
『何？僕に用？』
『ううん、ただどこ行ったのかな～って』

そう、と返すと嬉しそうにうふふ、と笑う君。
今日もいつも通りか。そんな風に思ってたあの日。

いってらっしゃい！と見送られ、クルルの元へ。
いつものように、退屈だったから遊びに行っただけだった。

戻ってきたら、みんな死んでいた。
否、殺されていた。

妹の、サリアの手によって。

その手を赤く染め上げて、狂ったように笑っていた。
『あ、姉様～♪』

生まれて初めて、恐怖を感じた。

背筋が凍りついて、全身に、寒さを、感じた。

『な、な、何で…どうして…』
一言話すのがやっとだった、訳が分からなすぎて。

『姉様が好きだから』
その理由に、またもや、背筋が凍った。

通常、血にしか興味を示さない吸血鬼が、他の物に興味を示したら。

その執着ぶりは、異常と呼べるほどだった。
禁断の恋とか、病んでる何てものじゃない。

純粋に、僕が欲しかったのだろう。
自分だけを見てくれる僕が。

僕に抱きついてきたあの子を突き飛ばし、屋敷を飛び出した。

匿ってくれる宛なんて、全然知らなかったけど。
それでも走った。無我夢中で走って、着いた先はクルルのとこだった。

『あらシェリア、…何で泥まみれなの』
『頼む…少しだけでいい、匿ってくれ』
クルルは僕が逃げ出す手伝いまでしてくれた。

『クルル、本当に世話になった』
『別に構わないわ、それより早く、行きなさい』

そして、持ってきたストックの血が尽きて、
渇きが限界になったとき、出会ったんだ。

あいつに、風音に、ね＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿