負けたくない ページ40
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____俺は、個性ありきで一度も綾芽に勝てたことがない
初めに闘ったあの日から、俺は結局綾芽に勝てていない。
あの頃はまだ無個性だったから？
そんなことを理由にはしたくはなかったし、俺はいつでも、個性がなくとも勝つつもりでいた。
____君、すごいね。でも詰めが甘いよ〜____
後出しのように個性を繰り出して、詰みだったはずの戦局をあっという間にひっくり返す。
そんな彼女の闘い方に、情けなくも羨ましく思った自分がいた。
不甲斐ない。情けない。
俺の信念は曲がらない。張り詰めて張り詰めて、切れそうになったその瞬間、緩めてくれたのも彼女だった。
____ヒーローは孤独なもんかもしれないけどさ、独りで闘うわけじゃないんだよ____
自分は無自覚に思い詰めるタイプだと初めてわかった。初めて合わせた背中は、向けられた信頼は、ただ独りで闘うだけの俺の世界に光を当てた。
世界が変わったら、彼女への感情も変化した。
今では頼れる仲間であり、ペアを組むなら彼女とということが多くなった。
けれど時々、心の奥に引っかかる。
俺は綾芽に頼りすぎていないか。
俺は綾芽の隣に立っていていいのか。
俺に綾芽の相棒を務める力はあるのか。
その資格はあるのか。
そんな想いを言葉にすれば、きっと彼女は怒るだろう。
彼女は強い。そんなことは知っている。だから不安になる。その彼女の相棒が俺でいいのか、もっと適任がいるんじゃないのか。
相性がいいのは自分でも自負している。ただ、力不足なんじゃないか、と思わずにはいられない。
____お兄さまはもう少し、甘えるべきですわ！____
……甘えるのは難しいぞ、百。
やっぱり怖いし、結構俺が辛い。
綾芽はきっと「気にするな」という。
それでも、俺が気にしたいんだよ。
弱いままでいたくない。
強くなってお前と並びたい。
だから、勝つぞ綾芽。
堂々と隣に立てるように。相棒と呼べるように。
俺が俺を、認めてやれるように____
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年1月4日 11時
