落とし穴 ページ38
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水で作られた高度な落とし穴。
吸い込まれそうになったミツルの身体を、大きな宝石が掬い上げた。
「助かった、宝鱗」
しっかり地に足つけて、ミツルはホッと息をついた。
まったく綾芽のやつめ。油断も隙もない。
「どういたしまして。やっぱりミツルくん狙いね」
「……そうらしいな」
『すっげー腹立つ！』
綾芽の罠に、ミツルと希乱の士気が上がる。
奇星自身からも綾芽が見えないため、奇星は自分だけがヘイトを集めているようで複雑な気分だ。
「宝鱗、綾芽の電話は水の神で埋まってる」
「それで姿消してるんだね。じゃあ光を遮る？」
「いや、それだと要領が悪い。……
「了解！ 綾ちゃん、私もいるんだからね！ ミツルくんだけが恐いわけじゃないって、わからせてあげるっ！」
生成された宝石が光を反射する。
その宝石特有の濁りは、綾芽の居場所を見つけ出す目印になる。
放出範囲を部屋いっぱいに広げ、その変化を見逃さぬよう力を込める。素早く放たれた宝石は、希乱の定めた軌道を外し、ある一点に集中した。
「____OFFなんだよ、希乱。
僕を忘れないで欲しいんだよ！」
バラリ、と宝石は力なく地面に落ちる。
奇星の【引き寄せ】の個性が希乱の軌道を壊し、【コントロール】の個性で宝石の操作権を無効化したのだ。
「忘れてないよ、奇星……
少なくともミツルくんはね！」
フッと奇星の視界に影がさす。
先ほどまで視界の端に捉えていたはずのミツルが姿を消し、その影を追いかけた。
「チェックメイトだ、麗日」
奇星の弱点は、個性を使わない攻撃____
今ここでミツルの金槌を引き寄せることは、攻撃を喰らいにいくのと同義である。
「我の思いに応えて護れ____突き飛ばせ」
瞬時に奇星を水の膜が覆い、ミツルの金槌が触れた瞬間に形を硬らせた。透明な氷が力任せに金槌もろともミツルを押し返し、淡く冷気を放つ。
「そりゃあ仲間がピンチになれば動くよな……
そこだっ！」
ミツルは聞こえた声を頼りに位置を定め、武器を金槌から槍に切り替える。床を沿うように滑らせ、砂埃を巻き上げた。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年1月4日 11時
