育手の山の罠張り屋さん【鬼滅の刃】

仕掛けが44個 ページ45

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しのぶと別れ、十は東からは回り込んでいた。
要からの連絡はない。まだAたちが到着しているかどうかはわからない。

「〜〜〜〜〜っっ‼‼」

……⁈
言葉にならない声が聞こえた。

その声に向かえば、ある一定の範囲に糸が張り巡らされていた。

「……この暗闇に糸かよ。思った以上に見にくいな」

ふと上を見上げれば、隊士たちが吊り下げられていた。マリオネットのように手足を糸に取られ、首があらぬ方向にねじ曲げられている。
そっと合掌して、眉間にシワを寄せた。

「……ごめんな。まだ下ろせないんだ」

鬼に喰わせるわけにはいかない。
そう考えると、地に着けるより空中にいてくれる方が安全だ。

拳を握りしめ、また走り出す。
その先にいるはずの、聞こえた声の本人に向かう。

「ウギィイイァイイッッ！」

……いた。
さっきのような糸じゃなく、しっかりロープで吊るされている猪頭。
それは、先日の最終選別でAと追いかけっこしていた猪頭だった。一般隊士として派遣されたのだろう、怪我を見る限り強い隊士に助けられたものの、強制安静込めて縛られてるって感じだ。

「デメェ！ 青飾紐(リボン)ど一緒にいだ！」
「おーおー喋んな喋んな。喉潰してんだぞ、考えろ」

ポンッと猪頭を外し、口から出ている血を拭ってやる。暴れる猪頭を軽く抑え込み、うーむと考え込む。

もうAたちは着いてるようだ。
俺も向かいたいけど、このままコイツを放置するのも危ない。

「……たく、なんでAは残ってねぇんだよ」

……怪我人のもとを離れるなんて予想外だ。
十の声は、また暴れ出した猪頭の声に遮られた。

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