育手の山の罠張り屋さん【鬼滅の刃】

仕掛けが38個 ページ39

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「……っ、く、」


嗚咽を漏らし泣いている彼の背中をさする。
錆兎の信念を大切にしてくれる彼に、感謝と喜びと、錆兎へのちょっとした羨ましさ。
死してなお、こんなにも誰かに想われている錆兎に「誇っていいよ」とエールを贈る。

私も、向こうで死んだとき、誰かを泣かせたのかな？
こんなに想ってくれる人がいたかどうかすら危ういんだが。






____A！____




また聞こえたあの声。
懐かしくて、けれどとても近くにいるような……





思い出そうと頭を捻っていれば、視界の端に映る空の青にキラリと何かが反射した。




「A！ 任務ダ！ 任務ダーーーッッ！」



蓮夜⁈

驚きいつものように嘴をひっ掴もうと構えを取ろうとするが、グッと身体が動かない。
彼にガッチリホールドされていることに気がついたのは、もう蓮夜の嘴が見えてきた頃だった。

ちょっ、まってこの体勢はヤバい！
刺さる！ 蓮夜の嘴刺さるからぁっ！

迫りくる蓮夜の嘴に焦っていれば、ガシッと私の目の前で蓮夜の嘴が掴まれた。

「……なんだ」

流石は水柱様。
見もせずに蓮夜を止めて、心底不機嫌そうに眉間にシワを寄せる彼。
「フンッ！」と彼の手から抜け、蓮夜がバサバサとうるさく羽を鳴らす。


「オマエ誰ダー！ Aヲ離セェッ！」

「蓮夜落ち着け！ この人は水柱様！ 不敬だよ言葉を改めなさい！」


相変わらずうるさい蓮夜に注意するが、話題の中心である彼はゴシゴシ目元を擦っている。
やめなさい跡になるから。


「……別に構わない。鴉相手に腹は立てない」

「……ですが、」
「その敬語を外してくれ。息が詰まる」
「ですが水柱様、」
「その呼び方もやめてくれ」

「……いやいやいや！」


食い気味に求められた要求に、首を横に振る。
どうやら敬語が堅っ苦しくて嫌なようだ。
「錆兎のことは呼び捨てなのに」と不満気に言う彼にため息を吐きたくなる。吐かないが。

「水柱様にそんなことできませんよ」
「……俺は水柱じゃない」
「子どもですかっ！ 現実逃避しないでくださいっ」
「……子どもじゃない。蝶屋敷では名前で呼んでいただろう。敬語もなかった」

「あれは人違いですからッッ！」


そんな会話を連ねつつ、結局敬語も水柱様呼びも禁止されてしまうのだった。

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