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仕掛けが35個 ページ36




「錆兎は、自分の死を誰かのせいにしたりしません」


その言葉が頭の中にこだました。
彼女は大きく息を吐き、少し前までと同じ生真面目な礼をして言葉を紡ぐ。


「……出過ぎた真似をいたしました。
錆兎の件をお伝えいただきありがとうございます。
それでは失礼いたします」


くるっと俺に背を向け歩いていく彼女。
その後ろ姿は心なしか苛立っているように見える。


「……っ、」


また、怒らせた。
俺は誰かを怒らせてばかりだ。
違うんだ。
錆兎を侮辱したかったんじゃないんだ。


「……ま、待ってくれ」


絞り出した声は、覇気もなく情けなかった。
ピタリと動きを止めた彼女は、ゆっくりこちらを振り返る。

けれどそこから声は出なかった。

なにを言えばいい。ただこのまま行かせるのは嫌だったんだ。
取り返しがつかなくなる前に、何か____



はあ、と彼女からため息が漏れる。
こういうとき、上手く言葉が出ない自分が嫌だ。




「私の気持ちを、曲解しないでくださいませ」




ハッとして、彼女と目が合った。
真っ直ぐな蒼い瞳が俺を射すくめる。


「私は怒ってません。恨んでません。
……錆兎に悪いと思っているなら、繋いでください。大事にしてあげてください」


ポツリ、波紋が広がる。


「錆兎との思い出は、貴方にとって呪いですか? 呪縛ですか?」

「……っ、違う!」

「そうでしょう。
錆兎だって、貴方の足枷になんてなりたくないんですよ、最初から」


わかっていても……苦しくてしょうがないんだ。
何かのせいにしていたいんだ。それが、もう叶わないことだとわかっていても。

また顔を下げた俺に、彼女はズイッと覗き込むように視界に映り込んだ。


「反省会も結構ですが、どれだけ振り返ろうと逆走しようと昨日にはたどり着けません。
どれだけ亡くしても、失くしても、背負って今日を生きてくださいませ」


揺らさぬよう凪いできた心に、ポツリポツリと波紋が浮かぶ。









「もし大切な人が死んだら、おまえなら、どうする」




問いかけたくなった。
無神経な質問だということはわかっていた。

彼女は驚いたように目を見開いて、少し考えてからニッと笑った。



「そんなの、そいつの分まで生きて生きて、あの世に行ってから『さっさと離脱しやがって、バーカ!』って笑ってやりますよ」




____そいつの分まで、抱えて生きろ。
それがきっと、今頑張るだけの理由になる。

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紅葉(プロフ) - うりよさん» まさかの本名が言い直される事件(笑)。コメントありがとうございます!自分で書いてて、夢主は何も知らないから義勇さんの地雷踏みまくるのを「ああぁあぁ!」と思いながら書いてます(笑)。頑張りますね!これからもよろしくお願いします! (2020年3月21日 14時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
うりよ - 錆兎((ゲフンゲフンさびうさぎいいいいいいうわあああああああぁぁぁあああぁぁぁんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん義勇さんがいたたまれない!!!!続き楽しみにしてます! (2020年3月18日 19時) (レス) id: 21c35aca73 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 甘音 舞影さん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてうれしいです!頑張ります! (2020年3月18日 9時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
甘音 舞影(プロフ) - 好きな展開過ぎてしんどいです、これからま頑張って下さい (2020年3月18日 4時) (レス) id: 299a382383 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉 | 作成日時:2020年2月13日 20時

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