ぶりっ子ならぬ、いい子ちゃんの私はマネージャーです。２【青葉城西】

Ｎｏ．７６ ページ41

水口「なあ、A。起きてしまった事は、もう二度と無かったことにはできない。
お前に降り掛かった悲惨な事情は、もう二度と消すことはできない。

でも、だからこそ前を向いていこう。
俺はお前を見捨てたりしないから。ずっとずっと、傍にいて愛してるから。


なあ、A……。
俺と本当の家族にならないか？」


そう言って、叔父さんは私の頭を撫でる。
……涙が溢れて頬を伝うのがわかった。

叔父さんの言葉は、こんなにも温かい。
叔父さんの心は、こんなにも愛で溢れている。

なんで、私は自らを取り繕うとしたんだろう。
この人は……両親みたく薄情な人ではないのに。


A「ごめんなさい、叔父さん……。

私、叔父さんに愛されたかったの。
もう二度と捨てられたくなかった。
私は、自己中で傲慢で我儘な性格だから、誰からも愛されないんじゃないかって。

だから、『いい子ちゃん』を演じた。


でもね、こんな私でも心配してくれたり仲良くしてくれる人ができたんだ。

いや……違う。最初からいた。
こんな私でも受け入れてくれた人達が。
叔父さんだって、その一人だよ。


叔父さん、これからもこんな私でよければ……末永くよろしくお願いしますっ……！」


涙が溢れて、顔がくしゃくしゃになるのがわかる。
でも、今言わなければ、という思いでいっぱいになった。

声が震えて、ところどころ嗚咽が漏れた。
それでも、叔父さんは私の頭を撫でて話を聞いてくれた。


水口「なに馬鹿なこと思ってんだ……！
俺は、どんなお前だって……愛してる。
それは今までもこれからも変わらない。

……だから、思いきって我儘でもなんでも言え。


『お願いします』って言われなくとも、俺はお前の面倒を見るよ」


叔父さんはそう言って、笑った。
太陽みたいな笑顔を私に向けて、泣きながら笑った。

叔父さん、ごめんなさい。
それと……よろしくお願いします。


私、もう目を逸らさないよ。

国見とも向き合う。
男子バレー部のみんなとも向き合うよ。


過去のことは、絶対忘れられないけれど、私は今を思いっきり楽しむから。



時計の針は、５時４０分を指していた。

私は支度をして、叔父さんと共に家を出た。
向かう場所は＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿。

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