ぶりっ子ならぬ、いい子ちゃんの私はマネージャーです。２【青葉城西】

Ｎｏ．７２ ページ37

国見ｓｉｄｅ



A『本当はそんなこと思ってないくせに！
口先ばっか言わないでくれる！？』


俺の言葉は、こんなにも君には届かない。
それほど、俺はAを傷つけたんだろう。


国見「ごめんっ……ごめんっ…ごめんなさい。
ごめんなさい……ごめんなさい……ごめっ……」


Aが去った教室。
一人であることをいいことに、馬鹿みたいにそう唱えた。

走ってもないのに、頬に雫が流れていた。
きっとこれは汗だ。さっきまで部活やってたし。
だから、きっと涙じゃない。


それから、どうやったか覚えていないけど、俺はいつの間にか体育館にいた。

笑えるほど自分の声が震えていた。
そんな俺を察し、及川さん達は笑顔で早く練習をやるよう言ってくれた。


だが…………


及川「国見ちゃん！」

国見「あ……はい」


俺はまったく練習に身が入らなかった。

今までなんとか繋いでいた集中も、まるでプッツリと切れたかのようで。
何度及川さんのトスを落としたことか。


岩泉「今は集中しろよー」


岩泉さんがそう告げた。
生返事を返し、また目の前がぼーっとする。


ねえ、A。
お前のいない世界が当たり前だった。
この数日間だけは、当たり前のようにAがいたけど。

でも、この十数年……俺はお前のいない世界だったはずだ。

それなのに、なんでお前が隣にいないだけで、こんなにも辛いんだろう。


息ができない。

世界が白黒に染まっていく。

あれ、俺ってなんでここにいるんだろう。


それから、何度も注意を受けた。
監督やコーチがいないことが幸いだった。

こんな俺は、今ではチームの足でまといでしかない。


金田一「国見、避けろっ！」


金田一の声がして、ハッと我に返った。

でも、目を見張るが既に遅い。
ぼーっとしていたせいか、目の前に流れ球が飛び込んできた。

嗚呼……前にもこんなことがあった。
その時は、Aを助けたっけ。

しゃがんだり手でさばくことはできるけど……。
不思議と俺はボールを見つめていた。


避ける気力もありはしなかった。

ただひたすら、襲うであろう激痛を待つだけだった。



ねえ、A。

俺だけに見せる本当の笑顔を浮かべて、俺の名前を読んでくれないか……。

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