第１９１話 ページ41
A「失礼してもよろしいですか？」
襖の向こうにいるであろう人物に声をかけると、
「っ！」という息を呑むような声が聞こえた。
少し間が開き、「……はい」という弱々しい返事を聞いてから、静かに戸を開ける。
そこには、小夜さんに膝枕をしている江雪さんがいた。
そして、不動さんがその近くで江雪さんにもたれかかりながら寝ている。
小夜さんの頭には白い布が巻かれていて、
不動さんの手は包帯に包まれていた。
A「手入れをしてもいいですか？」
江雪「……はい、お願いします。
痛みから二人を解放してあげて下さい」
江雪さんは長い睫毛を伏せながら、そう答えた。
私は二振りを鞘から抜き、
鋼色に輝く刀身に拭い紙を当てる。
江雪「……何かあったのか聞かないんですね」
A「無理に聞かれるのが嫌なのはわかりますから。
言いたくなったら、言えばいいことです」
江雪さんの弱々しい声音に私はそう返した。
小夜さんの刀身に打粉を打つ。
その時、江雪さんの口が開いた。
江雪「……小夜は、助けたはずの人間に石をぶつけられました。
その理由は『両目の色が違うから』という理不尽なもの。
それだけで、小夜を傷つけました。
……私はそれが許せなかった。
この黒い瞳は、小夜が大切な人を思ってとった行動の印です。
私はそれを恥だとは思わない」
江雪さんはそう言って、小夜さんの頭を撫でる。
その手つきはとても優しく、江雪さんは愛おしそうに目を細めた。
その姿は、人間の家族よりも深い絆を感じる。
江雪「ですが、小夜の血を見て我を失い、
私は己を抜き、刀も持たず人間に刃を向けました。
怒りに身を任せ、私はそのまま振りかざし……。
……不動さんが受け止めてくれなければ、私は命を奪うところでした。
和睦を説く私が……自ら争いを生み、仲間を傷つけた。
私はそれが何より許せない。」
江雪さんはそう言って、肩を震わせる。
不動さんの手の怪我は、江雪さんを止めようとしてできたものなのか。
油をさし、小夜さんの刀身をしまう。
A「弟のために怒れるなんて、流石はお兄ちゃんですね」
江雪「え……？」
私は江雪さんに微笑みながら、そう言った。
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蜂の巣 - 194話冒頭の「長谷『倉』side」が「長谷『部』side」になってます (2019年3月9日 1時) (携帯から) (
レス) id: d5ccda77cf (このIDを非表示/違反報告)
紀羅 - 多種多様性って知らんのか！昔の人間だからな…と思いました (2019年1月29日 0時) (レス) id: 80e8fc00d9 (このIDを非表示/違反報告)
シュヴィーレイン(プロフ) - コメント失礼します。今回更新の部分で浪士3を倒す場面で、小夜が言ってるセリフが自分で入れた名前になっているのですが… (2019年1月8日 22時) (レス) id: 74f7c9dea9 (このIDを非表示/違反報告)
白器(プロフ) - え、まって泣いた、めっちゃ泣いた！2回ぐらい。更新、できたらでいいので待ってます！ずっと待ってます！ (2018年12月18日 19時) (レス) id: 606a83cb8b (このIDを非表示/違反報告)
桜 - やばい…先生かっこよすぎる。え、イケメンなんですけど。本当にかっこいい！！！！やばすぎじゃないですか！？マジで本当にかっこいい…惚れました。更新やめたのかな？？？できれば続けて欲しいです。 (2018年11月27日 22時) (レス) id: fcb91909ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちゅまろ氏 | 作成日時：2018年8月1日 12時
