四人の歌い手は鬼を狩る

時透双子 ページ3

や「きゅい。」



　やまだぬきが案内してくれた先には、山の中に一軒家がぽつんとあった。



う「誰か住んでるのか？」



や「きゅい。」



　やまだぬきが頷いて肩に乗って来て、取り敢えずぐるりと周りを一周してみる。



　…誰かが何か作ってる、生活の音がする。



？「おい。」



う「うわっ⁉︎」



　我ながら情け無い声が出てしまうが、そんな事はどうでも良い。



　その場から飛び退いて、バクバクなってる心臓を押さえて背後に居た人を見ると、綺麗な男の子が居た。



　多分男。



　目に光が宿ってない気がするけど、気が強そうで美人だった。



　小学生ぐらいか？



　俺より身長低いから！！！(此処一番大切)



？「お前、一人なのか。」



や「きゅいっ！」



？「た、たぬき？」



　やまだぬきは何故か怒って男の子を睨み、取り敢えず頭を撫でて黙らせて、相手を見る。




う「俺はうらた、こいつはやまだぬき。人里に行きたくて…。」



　咄嗟に出た言葉に、相手は首を傾げる。



？「普通、こんな山奥に迷ってくるか？」



う「…ま、迷ったと言うか、気が付いたら森に居て…。」



？「親に捨てられたのか？」



う「！…捨てられたって思いたく無いけど…、…親父達、弟の方が大切って言ってたから…。」



　声優の演技力が試される時が来た。



　良心が痛むが、今は生死が掛かってる。



　かれこれ言ってられない。



？「…なら、家来るか？」




う「！！…良いのか。…俺、素性の知れない奴なのに…。」




ゆ「あぁ、俺らも親はとっくに居ないしな。俺は時透有一郎だ。」



　有一郎は笑いもせずに中に入って行き、手招きされて、取り敢えず中に入ると、有一郎のそっくりが居た。



ゆ「うらた、双子の弟の無一郎だ。」



む「よろしくね、うらた。」



う「！…お、お世話になります。」



　取り敢えず頭を下げて顔を上げると、無一郎は優しく微笑んで居て、顰めっ面の有一郎とは真逆だった。



　…これだけで、人の性格って何となく分かるよね。



　双子の兄有一郎は、気難しいが優しい。



　双子の弟無一郎は、温厚で優しい。



　双子で表情は真逆だけど、優しい所は同じ。



　此処に連れて来られたのは急で、生意気なやまだぬきがセットだけど、まぁ、知り合いポジションが居るだけで、かなり安心。



　…よし、双子の邪魔にはならないようにしよう。

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