【薄桜鬼】何か求められても困りますが (ページ1)

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阿呆で馬鹿な戯言ページ1

何も出来ないと、よく言われた気がする。
なんにも出来なかったよねと
親に何度も言われた。
ほとんど記憶はなかったし、
今となっては笑い話に過ぎないけれど。
本当に、何も出来ない人間であったらしい。

父親はその手のスジでは名の知れたヤンキー。
母親は暖かな温室で育てられた令嬢もどき。
私が幼い頃は家計は火の車で
父親は私が眠ってから帰宅し
目覚める前に出勤した。
物心着くまで父親の認識は他人だった。

何も知らずに育ったと思う。
真綿に包んで育てられた。

社会に出るまでは。

社会に出るなんて
大層な言葉だと思われるだろうけど
それは要するに保育園や幼稚園の事だ。
初めて関わる同世代の人間。
自分が何も出来ないと認められたのは、
どうやらその時だったらしい。
玩具も、遊具も、生活も。
誰よりも愚図で、一日中泣いていた。
本当に何も出来ない、ただの愚図。

馬鹿な事にスポーツを始めた。
これは後になって知ったことだけど、
指導者は何も使えないポンコツだと
一日目で判断したらしい。
ランキング最下層。
指導者のストレスのはけ口にも
子供たちの鬱憤の掃き溜めにも
時には保護者たちの中傷の的だった。
その時初めて知った。
出来ないことは罪なのだと。
自分よりあとから入ってきて
自分が色々教えた人間に
もう名前で呼ぶなと縁を切られた。
子供だって馬鹿じゃない。
つるむ相手くらいは選ぶらしい。

生憎私は持っている側だった。
学力も、運動も。
高学年あたりに一気に伸びた。
出来る側にたった。
自分に与えられる評価は、
結局何も変わらなかった。

寧ろ、底辺にいた、
私を見ることで
己を何とか保っていた友人すら消えて、
本当に何も無くなった。

馬鹿だと思った。
全部が、どうでもいいと思った。

父親は勝ちにこだわる人だった。
何も出来ない私を変えようと、
戦時中もびっくりのスパルタ指導で、
私をどうにか
できる側に押し上げたかったらしかった。

プレイも何もかも全部自分でやれという。
指導者は当然怒る。
私をよく思わない人間も、皆苛立ったことだろう。
父親はそれから守ってはくれなかった。
彼の母親が癌だったからだ。
信用していると何度も言ったくせに、
その事実を知ったのはつい最近のことだ。

最近は弟にかかりっぱなしで。
あの頃批判した全てを、
彼は今弟に一身に注いでいる。

結局彼は、
それから私のことなど一度も見なかった。
それでも尚、何も残せなかったカスだと言う。

……ああ、なんてくだらない。