伊藤の妹は三橋にゾッコン。Part7【今日から俺は!!】

にひゃくきゅうじゅうろく！！ ページ1

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突然、扉がぶっ壊されたかと思うと
普通の髪型に長ランのお兄ちゃんが飛び込んできた。




伊藤「Aっ!」

「お兄ちゃん……」

伊藤「大丈夫?!」




すぐに駆け寄って、
私の手首に繋がれた手錠を外そうとする。

だけど、もちろん素手で外せるわけもない。





「お兄ちゃん、そこの机の中に鍵が入ってるから」

伊藤「分かった」




すぐに見つけて、手錠が外れた。

やっと自由になった手首が痺れてくる。




ぎゅむっ、と抱き締められた。






伊藤「ごめんな、早く助けに来てやれなくて……」

「ううん、大丈夫。お兄ちゃんどうして戻って来たの?」

伊藤「家の鍵、Aに貸したままだったから」




……ツイてるな、私。




椋木「ゆ、幽霊は?」

「いませんよ」

伊藤「そうだよ、誰にやられたんだA?!
まだそう遠くには行ってないよな?!」




私の体を離さないまま辺りを見渡すお兄ちゃん。


すると狙いすましたかのようなタイミングで
廊下から誰かが走ってきた。





榊ヶ峰「Aさんっ!」

椋木「あれそーちゃんどうしたの」

榊ヶ峰「僕がトイレに行ってる間に姿が見えなくなって……そしたら凄い音がするから……」

「……っ」





よくもまぁ、そんな演技を。


でも私にはこの人を制裁する力はない。



なぜなら、人質が二人もいる。






榊ヶ峰「ごめんね、Aさん。
僕が変なタイミングでトイレなんか行ったから……」

「……いえ。先生のせいなんかじゃないです」

伊藤「A、痛いとこは無い?」

「うん。大丈夫だよ」






お兄ちゃんの腕を剥がそうとした手が、
情けなくも震えていた。


うまく力が入らない。









───君を生かしてあげる。


───その代わり、口外しないこと。


───君には大切な人がたくさんいるみたいだしね。


───……死なせたくないでしょ?








「……、…」




私が少しでもおかしいことをしたら、
大事な人たちが危ない目に遇ってしまう。



そんなの絶対に嫌だ。


死んでも、嫌。









「……っ、く……」

伊藤「A……」







お兄ちゃんが頭を撫でてくれる。


それに安堵する気持ちと、
ますます恐怖に追いたてられてるみたい。






泣いてる姿をあの男に見られてるのが

なによりも悔しい。









私は暫く、お兄ちゃんの胸の中で声を殺して泣いた。




冷静になろうと、必死だった。









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