伊藤の妹たちの番外編【今日から俺は！！】

クリスマス*10 ページ33

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三橋さんに少し待ってもらって、
玄関を開けるとサンタ姿のお兄ちゃんが
満面の笑顔で立っていた。



伊藤「ただいま!」

「おかえり……早かったね」

伊藤「うん。京ちゃん、夜は明美ちゃんとお出かけするんだって」



……大体内容は想像つく。




伊藤「……ん?受話器置いてあるけど、
誰かから電話かかってきてたの?」

「っあー、あー!そう!えと、り、理子さんから!!」

伊藤「ふーん?」

「女子トークなんだからね、聞かないでよね!」

伊藤「え〜。まぁわかったけどさぁ」




渋々、といった様子でリビングに入っていく
兄を見送ってから小声で受話器に声をかける。




「すいません三橋さん。それで、なんですか?」

三橋『とりあえずさ、お前……今から暇?』

「少しだけなら……」




夜ご飯の準備もあるけど、
夜までまだ時間はたくさんある。


そう伝えれば電話の向こうで
『ふーん』と興味無さそうな声。




三橋『一瞬だけちょっと付き合えよ』

「え?」

三橋『商店街のパン屋んとこで待ってるから。
ちゃんと防寒してこいよ』

「え、あの、あの!」

三橋『んだよ』

「も……しかして、で……デートですか?」





聞いといてめちゃくちゃ恥ずかしくなった。



何聞いてるの?!

浮かれポンチすぎでしょ?!


正直言うと舞い上がってますけど!!




だってしょうがないじゃん。


クリスマスに呼び出されたら誰だって期待するでしょ。


それが例え相手がデリカシーの欠片もない
アホでバカで精神年齢小学三年生の金髪パーマだとしても。





「すいません、今のは忘れ───」

三橋『……それでいい』






……え?





「今なんて……」

三橋『だからッ今ので合ってるって言ってんだよバァーーカ!!』

「ぇえ?!」

三橋『遅れたらぶっ殺す。防寒してこいよ』




二回目の『防寒してこいよ』を
残してガチャンと通話が終わった。



……どうしましょう。


“デート”に誘われました?私。




……ここに証拠(ボイスレコーダー)があります。



…………うん、たしかに『それでいい』って言ってますね。





…………。






「ぉ、お兄ちゃん」

伊藤「んー? どうしたA。
マフラーなんか巻いて、どっか行くの?」

「うん、すぐ、帰るから」

伊藤「……あれ?Aってそんなマフラー持って……」


「行ってきます!!」








疑われる前に私は走り出した。









冬の空はまだ夕方の時間でも、

もうすぐ夜を迎えようとしている。

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