伊藤の妹たちの番外編【今日から俺は！！】

クリスマス*8 ページ31

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それから私達は人混みから外れたところで
肉まんを食べ尽くしてると、

なにやらざわめきが。



すっごく柄の悪い連中さんたちが
道の真ん中を慌ただしく進んでる。




そのうちの中心にいたサンタさんが
こちらに気づくと険しい顔で
走りよってきた。





「……片桐さんまだサンタさんしてたんですか」

片桐「相良。他県のどこぞの高校が開久に喧嘩申し込んできやがった」



普通に無視された。



相良「他県? チッ、クズ豚野郎共が……」

片桐「悪いな」

相良「智司が謝る事ァねえだろ」

「大変ですね。クリスマスなのに」




ふと、相良さんは何か思い出したように
私を振り返ると、


首に巻いていたもふもふマフラーを
ゆっくりはずして、




「っえ」

相良「……お前の格好、見てて寒ぃんだよ」




私の首の後ろでゆるく結んでくれた。



相良さんの低く引っ掛かるような声が
右耳に触れてくる。



乱暴なようで優しい手つきに

男性免疫の少ない私は簡単にどきまぎしてしまっていて。






ゆっくり離れる相良さんは

私の目をしっかり見てから、


少し笑って見せた。






相良「んじゃな。せいぜい気を付けて楽しめ」

「はい……っ、あ、あの、マフラーいつ返せば……」

相良「やる」

「でもこんな温かいマフラーを……」

相良「良いんだよ」





そう言い残して相良さんは
片桐さんと一緒に人混みの中を
歩いていってしまった。



男性用のこのマフラーは
私にはあまりにもブカブカで温かくて。







「……初めて男の人にマフラー巻いてもらっちゃった」







お兄ちゃんが見たらキレそうだな。


家に帰る前にはしまわなくちゃ。









「……そういえば片桐さん、サンタさんの格好のまま喧嘩しにいったけど、大丈夫かな」





相手高校を不憫に思う。



クリスマスがトラウマにならなきゃ良いけど。







時刻は夕方の前。



そろそろ食材を買って夜ご飯の
支度をしておこうかな。




せっかくのクリスマス。









「豪華にせねば……腕がなるぜ」






ちょっとだけお兄ちゃんの真似をしてみる。







デートから帰ったばかりの兄の
ノロケ話を聞きながらクリスマスを
過ごすのもなかなか珍妙だけど、


仕方ない。



ちゃんと聞いてあげよう。









「……そういえば、三橋さんとすれ違わなかったな」





あの人はこういうイベントに
一番テンションあがってそうだけど、


案外、家で過ごすタイプなのかもしれない。


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