strawberry candle 31 ページ32
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「たくさん、書いてあるの」
三橋「…」
「タカシくんのこと。
イラッてしたり、ドキッとしたり、
もう色んなことが、たくさん」
三橋くんと並んで、まばらに並ぶ住宅街を眺める。
ぽつりぽつりと明かりがついたり、消えたり。
「一日じゃ読みきれなくてさ。理子ちゃんが寝たあととか、学校の屋上とかでこっそり読んでたの」
三橋「痛い奴だな」
「ふふ、私も思った。
……全部読み終わって、思い出さなきゃって」
三橋「……おう」
半分記憶喪失で、
六年間幼馴染である三橋くんのことを
分からなくなって。
大事なチケットも無くなってしまって。
夜遅くに一人で出歩いて。
心配かけて。
それでも三橋くんはずっと優しい。
一つ一つの返事が、相づちが、あたたかい。
「……初恋は、忘れたくないよ」
三橋「……」
「辛くて、苦い思い出でも、生まれて初めて好きになった人だもん」
三橋「ポエマーだな」
「……」
そろそろ次の場所行くぞ
そう言って三橋くんが私に手を差しのべる。
──まるでそれが、“昔から当然だった”みたいに。
そっと手を合わせると、大きな手が包み込んでくれた。
私の方がちょっと冷たい。
体温の差さえ、愛しくなってしまう。
三橋「……昔」
「うん」
三橋「給食でお前が大嫌いだったキノコのスープが出てよ」
「あー。キノコのやつね、なんとなく覚えてる」
三橋「ドッジボール行きてぇのに
残させねぇって先生に監視されてさ」
「青井先生だよね。たしか」
三橋「そう、ババァな。
お前そん時俺呼び出してキノコ食わせたんだよ」
「そうなの?!」
三橋「ひでー話だよな」
「う……ごめん」
三橋「良いけど。そのあとのドッジボールで顔面当ててやったし」
「ひど!!」
コンビニに入って、温かい缶コーヒーを二つ買う。
三橋くんにあげると、「カフェオレ甘いのに」とか
文句を良いながら飲み干した。
「……タカシくんは、私のこと覚えてるかな」
三橋「覚えてるだろ」
「……そっか。なんか、嬉しい」
三橋「……そーかよ」
コンビニ前にある時計を見上げると、
時刻は11時前。
もう一時間も経てば明日になってしまう。
「……そろそろ帰ろうかなぁ。
明日も学校だし」
三橋「他にいくとこあるだろ」
「んー……でも、」
三橋「行くぞ」
「わ、」
静かな夜が私たちを隠すかのようにぐっと寒くなる。
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Runa - めっちゃこのお話大好きです！応援してます！！！ (2021年6月9日 1時) (
レス) id: cf36c57a0e (このIDを非表示/違反報告)
りゅうの - めちゃめちゃ面白かったです!! (2020年3月22日 17時) (レス) id: c1d7a041f7 (このIDを非表示/違反報告)
みい(プロフ) - 素敵です。 (2019年1月29日 20時) (レス) id: ed675bb7df (このIDを非表示/違反報告)
月崎伊吹(プロフ) - ずっと気になってた作品で、今日やっと読むことが出来ました。とても面白かったです!なんと言うか……深い作品でした。これからも頑張って下さい。(ちなみに私の学校、クリスマスが終業式の日でした) (2019年1月7日 14時) (レス) id: 275071a833 (このIDを非表示/違反報告)
紫雨(プロフ) - ぺっぱーさん» コメントありがとうございます(*´ｪ`*)本当ですか！笑笑とても嬉しいです(≧∇≦) (2019年1月7日 12時) (レス) id: b7016d0be3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：神室紫雨
| 作成日時：2018年11月16日 19時
