strawberry candle 26 ページ27
.
「三橋くんっ!!」
教室に駆け込みながら彼の名前を呼ぶと、
窓際に座って半分寝ていた三橋くんが
ビクッと起き上がった。
三橋「え、なに?」
「ごめんなさいっ」
三橋「……なにが?」
「チケット、くれたやつ。
椋木先生に見つかっちゃって……」
すると近くにいた伊藤くんが
「思い出したの??」と嬉しそうに聞いてきた。
「う……全部じゃないんだけど。
でも三橋くんがチケットくれて、
すごく嬉しかったのは思い出した」
三橋「っ……」
伊藤「そっか。まぁ焦らず……だよな」
「でもあと少しで思い出せそうなの。
それで、あの、チケット……」
三橋くんはポケットからあのチケットを取り出すと
私に差し出してきた。
意図がわからぬままそれを受け取る。
三橋「ムッくんに返しといて」
「えっ……」
三橋「まぁもともと? 盗んだものだったし?
別にそんな行きてぇとも思ってなかったしな」
「……!」
伊藤「おい、三橋……」
ズシッと胃が重たくなる。
モノトーンみたいな世界。
三橋くんの顔をちゃんと見れない。
「じ、じゃぁ渡してくるね……」
三橋「おーおー。行ってこい行ってこい」
しっしっと手で追い払われて、
簡単に泣きそうになってしまう。
三橋くんに、嫌われたかな。
そりゃそうか。
だって記憶おかしくなって迷惑ばかりかけて、
挙げ句の果てに約束を破ったんだもん。
嫌われてもおかしくない。
「…………ッ……」
“三橋くんに嫌われた”
そう考えるだけで、苦しくて、苦しくて。
クリスマスなんて糞くらえだ。
階段の角のところで見つからないようにしゃがむ。
もうすでに目頭が熱くて、
いつ溢れてもおかしくなかった。
「〜ッ」
泣いちゃダメだ。
泣いたら、叱られちゃう。
………誰、に??
三橋「おい」
「うわぁ?!」
突然階段に現れた三橋くん。
私を見下ろす目は訝しげで、
「んなところでなにしてんだよ」と聞いてくる。
「べつに……」
三橋「あっそー」
「三橋くんは?」
三橋「コーヒー買いに行くだけじゃ」
「そ、そっか」
わー……。
私、無駄に期待しちゃった。
恥ずかしい。
三橋「……」
「……??」
その時、じっと見つめてきた三橋くん。
なにか言いたげだったけど「ばいびぃ」と
手を振って階段を降りていった。
strawberry candle 27→←strawberry candle 25
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 742人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Runa - めっちゃこのお話大好きです！応援してます！！！ (2021年6月9日 1時) (
レス) id: cf36c57a0e (このIDを非表示/違反報告)
りゅうの - めちゃめちゃ面白かったです!! (2020年3月22日 17時) (レス) id: c1d7a041f7 (このIDを非表示/違反報告)
みい(プロフ) - 素敵です。 (2019年1月29日 20時) (レス) id: ed675bb7df (このIDを非表示/違反報告)
月崎伊吹(プロフ) - ずっと気になってた作品で、今日やっと読むことが出来ました。とても面白かったです!なんと言うか……深い作品でした。これからも頑張って下さい。(ちなみに私の学校、クリスマスが終業式の日でした) (2019年1月7日 14時) (レス) id: 275071a833 (このIDを非表示/違反報告)
紫雨(プロフ) - ぺっぱーさん» コメントありがとうございます(*´ｪ`*)本当ですか！笑笑とても嬉しいです(≧∇≦) (2019年1月7日 12時) (レス) id: b7016d0be3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：神室紫雨
| 作成日時：2018年11月16日 19時
