彼女Editor(終) ページ9
Broooockから与えられる言葉はどれもこれも心地が良い。何の見返りもなしで、ただひたすらに私のことを肯定してくれるようなそんな言葉の数々をくれる。
おまけに、彼は無理やり土足で私の心には踏み込んできたりはしない。
少しづつ少しづつ、境界線をギリギリのところで見極めながらさざ波のように引いたり寄せたりしてこちらのパーソナルスペースに近づいてくる。
そうして結局、彼は私の隣にまで近づいてきた。
ひたすらに私のことを甘やかして、許して、一切の理性をも蕩かし、そんなだから私はだんだんと強い私を取り繕っていられなくなってしまった。
私が強い私を演じていたのは弱い私のことが許せず、受け入れられなかったのが原因だ。
でももしそんな「弱い自分」をすべて肯定し、その上で愛してくれる人がいたとしたら。
どうして私は自分を取り繕おうだなんて思えるだろうか。
私は弱いままの私を肯定されてしまった。何がいけないのか、と。何がおかしいのか、と。自分自身を否定せずに受け入れろ、と。彼からそう言われてしまった。
甘やかされた私はもう、「弱くてもいい」と思うようになってきていた。
―――それからはあっという間だった。
弱い自分を受け入れた私は彼に甘えに甘えた。
彼はそれをいいことに私をもっと蕩かして、僕がずっと一緒にいてあげるよ、と囁いた。
私はその言葉に心を震わすと同時に、「もし彼に裏切られるようなことがあったら私は二度と生きてはゆけない」と密かに感じて、恐怖した。
けれど、その恐怖がまた私を彼への依存へと駆り立てるのである。
私はこれからもきっと、依存すればするほど恐怖でまた依存に走るというループの中で、生かされ続けるのだ、彼の手によって。
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作者名:Entero-spiro | 作成日時:2019年2月13日 14時