ゲーマーは貴人の妹*三章【双星の陰陽師】 (ページ2)

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七拾弐ページ2

Aと常盤が氷漬けになっているとき会場は騒めいていた。

「え、嘘。死んじゃった・・・？」
「おいおい、これ大会だぞ。戦闘じゃないんだから」
「お母さん、お姉ちゃん達動かないよ」
「・・・そんな、こんなことって」

二人の安否に観客たちは騒めく。

『な、何と突如現れた氷山は二人を氷の中に呑み込んでしまいましたっっっ！！！！！
こ、これは常盤様の術による物なのでしょうか？
二人は大丈夫なのでしょうか！！！！』

実況の声も微かに震え、ことの壮大さを驚いている。

こんな前例は聞いた事が無い。

引き分けではない。

両者とも戦闘不能は、もしかしたらあったかもしれないが、両者とも死亡は過去にあっただろうか。

・

「・・・常盤、何ぜ、何故そんなことを・・・」

武舞台に向かうときに何時もみたいに笑って出て行った彼女は今は大きな氷の中に凍っている。

何時までも子ども扱いしたのがいけなかったのか。

それでも、大切だったから、守りたかったから、彼女の為に戦い、そして庇護してきた。

この戦いの結果が、これまでの俺の在り方への罰だとすればなんと大きな過ちを犯してしまったのだろうか。

「俺は、お前にずっと笑ってて欲しかっただけなのに。
泣いて欲しくなかったから、今までやってきたのにっっっ！！！！！！！！！！」

サラリと揺れる常盤と同じ銀色の髪。

武舞台に向ける双眸は口惜しさと悲しみと怒りと、負の感情を有りっ丈混ぜた様な。

青年は、うわ言のように常盤の名前を繰り返し呼ぶ。

何時もみたいに返事が返ってくると思って。

祈るかのように。

唯一無二の一人しかいない大切な妹の名を呼ぶ。

・

「Aっ！おい、有主っ！A大丈夫なのかよっっっ！！！！」

「こんな前例、知る訳ないだろう！！！あの、呪力をまとった氷が溶けるとは思えないし、だけどあんな何にもなしに戦う常盤さんは知らない！それに、あんなに焦ってるのだって初めて見たくらいだっ！！！」

同時刻ろくろ達も焦っていた。

武舞台に氷漬けにされたAは、透き通った水晶の中に閉じ込められたようで、まるで琥珀の中に閉じ込められている古代の生物と似た様な姿だ。

一切濁りのない氷は、二人を閉じ込めている。

もしかしたら、もう生きているAに会えないんじゃ？

なんて、不吉なことが頭をかすめる。

「お、俺Aの所に行くっっっ！！！！」

「お、おいっ！！まて焔魔堂っっっ！！！」