第22話 反応 ページ28
「あああ、緊張する……」
傍らに立つ里依紗は、さっきから何度も深呼吸を繰り返している。
「大丈夫、大丈夫! 」
その肩に手を置いて、対称的に、由実は明るく言う。
「里依紗なら、絶対大丈夫だよ! 」
月並みな言葉しかでてこないけど、私も精一杯明るくしてそれに続ける。
私達3人は、放課後、呼び出した和樹を待っている最中だ。
さっきから、何回かこのやりとりをしているけど、里依紗の緊張は、あまりほぐれていないみたいだ。
「あ、ほら、和樹来たよ! 」
由実が声を上げて、里依紗をつつく。
「行ってきな! 」
2人一緒に、そう言って背中を押した。
里依紗はうん、と微笑むと、和樹の元へ走っていった。
瞬間、風が強く吹いて、校庭の砂が舞い上がった。
少しの間、里依紗の姿がかすむ。
「……大丈夫かな」
ぽつりと、呟くように隣の由実は言った。
「大丈夫だよ。里依紗なら、きっと。」
さんざん里依紗に言った言葉を、今度は由実に、そして自分に言い聞かせるように言う。
「そっか。うん、そうだよね。」
由実も、自分に言い聞かせるようにそう言う。
遠くて、里依紗たちが話している内容までは分からない。それが、もどかしくてじれったい。
たった数分が、何時間にも感じられた。
話し終わった里依紗が、行ったときと同じように駆け戻ってきた。
その表情は……笑っている。
由実と目配せし合う。あんな顔してるってことは……よかった、のかな?
「里依紗! どう、だった?」
里依紗が戻ってくるなり、勢いこんで由実は聞いた。
「うーん。だめだった! 」
でも、当の本人は、へらっと笑ってそう返した。
「なんかね、今は、付き合うとか、考えられないって、言われちゃった〜」
「そっ……か」
私は、そんな風にしか、言うことができなかった。もっと、言わなきゃいけないことがあるのに。焦って、何も出てこない。
何か言おうとすればするほど、何も浮かばない。
「やだ、そんな顔しないでよ……」
言いかけた里依紗の腕を、由実が引っ張って遮った。
そして、そのまま何も言わずに、自分の元に引き寄せた。
里依紗は、驚いて数秒動きを止めた後、由実の肩に頭をうずめて、しゃくり上げるようにして泣きだした。
私は、黙ったまま、その背中を、たださすっていた。
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みーみ(プロフ) - かたつむりさん» ありがとう? (2015年5月5日 1時) (レス) id: 3798c6d4c4 (このIDを非表示/違反報告)
かたつむり - みーみさん» こっちも評価つけといた! (2015年5月5日 0時) (レス) id: 5586ef4182 (このIDを非表示/違反報告)
みーみ(プロフ) - エネ©Loveさん» ありがと (2015年3月21日 12時) (レス) id: 3798c6d4c4 (このIDを非表示/違反報告)
エネ©Love(プロフ) - みーみさん» 1000hitおめでとう!!!.・☆ (2015年3月20日 21時) (レス) id: 6c41e2807f (このIDを非表示/違反報告)
エネ©Love(プロフ) - 塩さんさん» wwwwwwww (2015年3月19日 21時) (レス) id: 6c41e2807f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みーみ | 作成日時:2015年2月14日 22時