第16話 意識 ページ21
ー里依紗sideー
私も由実ちゃんも、まだ心配だったけど、鈴ちゃんに言われて教室を出た。
廊下を歩きながら由実ちゃんと話す。
「Aちゃん、大丈夫かなあ……?」
と言ったけれど、返事がない。
「由実ちゃん?」
顔を覗き込む。
「え、ああ、どうだろう……すぐ治るといいね! 」
由実ちゃんはそう答えたけど、なんだか上の空だ。
今だって、考え込むような顔をしている。
Aちゃんの具合が悪いからっていう理由だけじゃなさそうだ。
脳裏を進也くんの顔がよぎる。
由実ちゃん……やっぱり……。
ねえ、と呼びかけようとしたら、理科室の扉を開ける音にかき消されてしまった。
まあ、後で聞けばいいか。
そう思いなおして席に向かう。
座ろうと荷物を置いたところで気がついた。
…筆箱がない!
さっき、Aちゃんのことでバタバタしてたから教室に置いて来ちゃったんだ……。
どうしよう、今から取りに行っても間に合わないよね……。
由実ちゃんに借りようかな?
と思った瞬間、チャイムが鳴って瀬戸先生が入ってきた。
えー……タイミング悪いな……。
前の子に借りれば……でも、そんなに親しくないしな……。
1人悶々としていると、すっと手が伸びてきた。
「貸すよ」
和樹君だった。
手には、シャーペンと消しゴムが1つずつ乗っていた。
「え、でも、私に貸したら和樹君が……」
「俺はもう1つあるから平気」
「あ、じゃあ……ありがとう」
私は普通にそう返したけど、内心すごく嬉しくて、舞い上がりそうだった。
こういう、ちっちゃいことが何より嬉しい。
それがそのまま顔に出そうで、平常心平常心と心の中で唱えていると、
「鈴宮さん、筆箱なかったの?ごめんねー、私これ1本しかなくて…」
前に座っていた子が振り向いた。
全然大丈夫だよ、と言うと
「そう?ごめん、気がつかなくて…」
と言いながら、くしゅんっ、とくしゃみをした。
大丈夫?と聞くと、大丈夫、と言いながらもまた連続でくしゃみをしている。
「……俺、テイッシュ持ってるよ」
和樹君がふいにそう言うと、テイッシュを差し出した。
「え?うわ、ありがとう。河野って女子力高いねー」
けらけら笑いながらその子は言ったけど、その表情は少し嬉しそうだった。
「お前、やるねー」
近くにいた男子にそうからかわれても、
「…何が?」
ときょとんとしている。
……そうなんだよな。
私は、ちくりと痛む胸を抑えた。
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みーみ(プロフ) - かたつむりさん» ありがとう? (2015年5月5日 1時) (レス) id: 3798c6d4c4 (このIDを非表示/違反報告)
かたつむり - みーみさん» こっちも評価つけといた! (2015年5月5日 0時) (レス) id: 5586ef4182 (このIDを非表示/違反報告)
みーみ(プロフ) - エネ©Loveさん» ありがと (2015年3月21日 12時) (レス) id: 3798c6d4c4 (このIDを非表示/違反報告)
エネ©Love(プロフ) - みーみさん» 1000hitおめでとう!!!.・☆ (2015年3月20日 21時) (レス) id: 6c41e2807f (このIDを非表示/違反報告)
エネ©Love(プロフ) - 塩さんさん» wwwwwwww (2015年3月19日 21時) (レス) id: 6c41e2807f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みーみ | 作成日時:2015年2月14日 22時