03…藤紫のサンカクくん ページ5
万里と紬さんと出会って数日経ったある日の休日。
私は喫茶店で出す新メニューの案を探しに、天鵞絨町を散策していた。
不意に目に留まった人だかり。
チラリと中央を覗くと、お芝居をしている数人の男の子。
高校生くらいに見えた。
そう言えば、ここってお芝居の聖地だった。
私は足を止めてそれに魅入っていた。
…私、天馬を避けてドラマとかもあまり見ないから…お芝居とか見るのはじめてかも。
「ふぅ、ありがとうございました！」
「ありがとー！！」
「サンカクー！！」
「ありがとうございました！」
拍手。それから、お金を投げ入れていた。
私もそれにならってお金を入れに近付いた。
「あー！！」
「！？」
「サンカクー！」
「ぇ…！？」
突然勢いよく目の前に飛んできた男の子。
サンカクのピアスをしたタレ目のその子は、可愛らしい笑顔で私の手を握りしめた。
「お姉さん！ それ、サンカク！」
「さ、さんかく？ あ…ああ、ストラップのこと？」
「うん！ 綺麗なサンカク！」
「ふふ、サンカク好きなの？」
「オレの名前ねー、三角って書いてみすみって読むんだよー。だから、サンカク大好き！」
「へぇ、三角くんって言うんだね。 はい、これあげるよ」
「！」
三角くんの手のひらの上に、彼が気に入ったらしいストラップを乗せる。
三角くんはキラキラした目で私を見て、笑った。
「いいの！？」
「いいよー。 素敵なお芝居見せてくれたお礼」
「あ！ 待って！ お姉さん、待っててね！」
「ん？」
なにか思い出したように他の子の所に走っていく三角くん。
「かずー！」
「お、スミー。 綺麗なお姉さんとお知り合いとか、やるじゃあん！」
「今、トモダチになったんだぁ。 ね、チケット残ってる？」
「ほい、まだあるよん！」
「じゃあ、オレお姉さんにあげてくる！ 」
「行ってらー！」
「ちょ、一成！ サンカク星人また飛んでったの！？」
会話が終わったのか、三角くんがまた飛んできた。
本当に人間の飛距離とは思えない飛び具合。
「お姉さん！ これ、公演のチケット！ あげるー」
「え」
「あ…かずが呼んでる…。 じゃあ、絶対だよー！！」
そう言って彼は嵐のように去っていった。
私はチケットを眺める。
「にぼしを巡る冒険？ …猫だ、可愛い。 …っ、！？」
文章に目を走らせていると、団員の名前が目についた。
“皇天馬”
***
続く (更新停止中)
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作者名：黎泉 杠 | 作成日時：2020年4月1日 13時
