わんしか言わない ページ15
『…おじゃましまぁす』
あれからしばらく広間で黒田くんとお話してたけど、
眠そうに目を擦りはじめた黒田くんに背中を押されて結局やってきたうっちーさんの部屋の前
難関の日本人形のショーケースには、いつの間にか布みたいなものが掛けられてて、ほっと胸を撫で下ろしながら通過してきた。
『いいのかな、勝手に入って…』
少し躊躇しながら部屋に入れば相変わらず薄暗い部屋は水槽のライトだけが青白く光ってて、
そうだ、餌あげなきゃ
『いっぱい食べろー』
水槽の横に置いてあった餌を水面にパラパラ撒けば、小さな魚たちがパクパクと寄ってきて、
ちょっとかわいいかも。
ヒレを一生懸命動かしながら餌を食べる姿に、こんなに小さくても精一杯生きてるんだよなって
『…いつ帰ってくるんだろ』
遠慮がちに腰掛けたベッド。
明日は今日泊まってるお客さんが朝チェックアウトしたら、その後は休みって言ってたし、
海の家は朝から一日お休みみたいだし、きっと帰ってくるの遅いんだろうな
薄暗いそこで水槽をぼーっと眺めてればだんだんとぼんやりしてくる意識。
重たい気がしてくる瞼を擦れば小さなあくびが溢れるから、
『ねむい…』
ベッドの端っこ、ギリギリ落ちないくらいの所に上半身を預ける
顔に当たったシーツからはうっちーさんの匂いがして、
またジンジンと熱を持ち始める右耳を手で覆うとぎゅっと目を閉じた。
キラキラと光が差し込む水の中、
目を開けた先には白くて透明な男の子がふわふわと漂っていて、
ぱちりと合わさった瞳が悲しそうに揺れる。
精一杯手を伸ばした先、あともう少しで指先が届くって瞬間、
光のゆらめきと一緒にだんだん溶けて消えていくそれ。
必死にもがいてかき集めようとしたけど、するりと腕をすり抜けていって、
小さな泡だけが水面にゆっくり登っていくのが見えるから
待って、消えないで、って
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ゆう - このお話が大好きで未だに何度も読み返しています。アオさんの紡ぐお話をまた見れる日が来るかは分かりませんが、今でもずっとだいすきなお話です。 (12月25日 15時) (
レス) id: 9b89e968b5 (このIDを非表示/違反報告)
ちぴ - お話終わってしまったんでしょうか？続き気になります＾＾ (2022年8月6日 3時) (レス) @page24 id: d3cdc5c0b2 (このIDを非表示/違反報告)
りぴ(プロフ) - はじめましめ！おはなし一気に読まさせて頂きました。本当に描写も言葉も引き込まれる作品で、この作品の虜になりました！もう更新はされないのでしょうか、、？（ ; ; ） (2022年1月29日 23時) (レス) id: 46981ee839 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - 更新ずっと待っていたので嬉しいです！ (2021年11月20日 21時) (レス) @page24 id: 034faa10a9 (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ(プロフ) - 初めまして。更新ずっと待っていました！☺︎アオさんの書くお話が1番好きなのでこれからも楽しみにしています！ (2021年9月19日 22時) (レス) id: 334d2140a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオ
| 作成日時：2021年2月12日 4時
