ごみ箱

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『…しょーま？』


「これで誰も見てないよ」


なんかくさいことしたなって思ったけど、
俺らしかいない教室でぎゅっと抱き締めたAの顔は、これで誰にも見えないわけで、

途端に小さく震え出す肩に、やっぱり我慢してたんじゃんって。



『キャラじゃない、っから、泣かないよーに、してたのに…っ』


「だから誰も見てないって」


『っ、湧のばぁか、アホドジマヌケ！！っうぅ』


「うん」



グズグズ泣き出すAの肩からは湧の匂いがして、なんか胸がきゅってする。



『彼女、っ髪長くねーじゃん！っ』


「だね(笑)」


いつだか髪の長い子が好きって湧がポロって零した言葉通り、律儀に髪を伸ばしていたA
普段ガサツなくせに、そーいうとこ女の子っぽくて可愛いかもって、思った気がする



『うぅ…てか！っ彼女いんのにぃ、カーディガン貸すなしっ』


「…かわりに俺の貸してあげるよ」



なんかAから湧の匂いがするたび、あのざわざわって感じするし

そっと離れてかわりに着せた俺のカーディガン。
脱がせた湧のはわざとぐちゃぐちゃに湧のロッカーへ押し込んで、



『っ、見んな』


「ごめん、」


ロッカーから振り返った先、鼻を真っ赤にして泣いてるAと目が合う。
見んなって慌てて手で顔を覆ったAに、やっぱり、なんか、



『も、恥ずかしいからいーよ、っ』


「ちがう」


『なにが』


もう一度ぎゅっとしたAの身体。

今度はうちの洗濯物の匂いがするそこに、

やっぱりぶかってなってるカーディガンの袖に、



「俺にすれば？」


『な、にっ』


「だから、俺にしとけばいーじゃんって」



肩を掴んで顔を覗き込めば、泣き顔のままポカンとしてるA。

まあ、多分俺の顔もおんなじくらいポカンとしてるんだけど。



『…自分で言ってその顔やめてくんない？』


「俺さ、Aのことすきなんかな？」


『っ、知らないよ！』


口に出してしまえば、あのざわざわする感じもなんだか全部が腑に落ちる気がして、

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